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第2回 特別企画

江戸東京たてもの園の見学

10月05日

 当園は小金井市の玉川上水の傍らに在る、江戸東京の歴史を今に伝える文化的価値の高い建物を移築し、復元・保存し、展示している野外博物館です。農家、商家、住宅などが20数棟ほど。民具、商品の陳列棚、家具なども復元されています。もちろんトイレもです。触れることのできる博物館で、その建物が建っていた時代の生活を擬似体験することができました。




江戸東京たてもの園を見学して

 そういえばこんな生活があったかもしれません。商家、写真館、銭湯などは、東京の下町で子供時代を過ごした私にとって、懐かしい生活を思い出させます。
 江戸東京たてもの園の銭湯「子宝湯」は、宮崎監督の「千と千尋の神隠し」のモデルとなった銭湯であまりにも有名ですが、私が子供の頃にはこのような銭湯が町にたくさんあって、大人も子供も近所の社交場でありました。ゆっくり大きな浴槽につかったことが思い出されます。
 園内の建物から当時の生活様式が想像できますが、今回は、し尿研究会の企画とあって、気になるのはトイレ、そして台所、風呂場などの水場です。
 江戸時代にさかのぼりますが、農家の風呂場は床が竹。たらいの湯を体にかけると竹の隙間を湯が通り過ぎて地面に流れていきます。自然換気と排水、なんと効率よくできていることでしょう。たいていの農家は廊下の突き当たりに便所があり、商家や民家は使用人部屋の隣に便所がありました。
 さて、大正、昭和初期は、ちょっとした家庭には使用人がいたのが普通であったといいます。その使用人たちの部屋は、想像以上に狭い処でしたが、仕事場としての台所や食堂は、木製冷蔵庫、外国製オーブン、ガス台などがあり、当時の生活が意外にも早くから近代的であったことにおどろかされました。
 園内27戸の復元建物の中で、私が一番印象深かったのは常盤台写真場です。現在の板橋区常盤台に昭和12年に建てられた写真館で、文化住宅が立ち並ぶ中にあって、ひときわモダンなデザインであったといいます。
 玄関から内部に入ると玄関ホールの南側には応接室があり、6帖ほどとさして広くありませんが、木製の床と和風の照明により落ち着きをかもし出しています。食堂と台所の向かい側には老人室が隣接していて、その境には回転式ガラス欄間が設けられています。台所と老人室の両方から食器や台所用品を出し入れできるなど機能的な構造になっています。
 上階には写場が高い天井と広々とした空間の中にありました。広い窓から入り込む自然光を利用した特徴的な写場であったといえます。ここで何人もの人々が人生の思い出を映し出したのでしょうか。記念に主人と一枚撮影をしてもらい、昭和初期を体験しました。
 今回の企画に参加して、江戸、明治、大正、昭和と一気に時代を駆け抜け、講演会とは異なった楽しい1日を過ごしました。企画された幹事さんに感謝します。

小松 美佐子  し尿研究会会員

                   千と千尋のモデルになった子宝湯