屎尿・下水研究会

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例会中止のお知らせ

このたびの東北・関東大震災の被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。
私たち幹事たちは今回の例会について、諸般の事情により中止をすることを決定しました。講師並びに期待されていた方々には、大変申し訳ありませんでした。

今後ともよろしくお願いいたします。



第63回 屎尿・下水研究会

東京・下水道よもやま話

新保 和三郎 氏

会員各位様
 梅の便りもちらほらと聞かれるようになってきましたが、まだまだ寒い日も有ります今日この頃ですが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
 さて、今年度最後の屎尿・下水研究会の定例会を下記のように執り行いますので皆様お誘いの上お出かけください。
                   幹事 小松

日時: 3月24日(木)18時30分〜
場所: TOTO・東京センターショールーム会議室
 新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー26階 TEL03―3345―1010
交通:JR新宿駅西口より徒歩5分
演題:「東京・下水道よもやま話」
講師:新保 和三郎 氏(元・本会会員)
内容:戦後、東京の下水道事業を本格的に展開するに当たり模索した行財政計画の軌跡を振り返り、それぞれの節目におけるエピソードを披露するとともにご自身の感慨を述べる。
備考: 同時に、テレビで放映された広報番組「こんにちは東京 地下1世紀1万キロ」(昭和57年、テレビ朝日、30分)を上映する。東京都下水道局の新保さんや松下行雄さんが説明を加えているほか、トイレ研究家の李家正文氏がコメントしている。
また、「屎尿・下水研究会文化資料−3 論考−トイレと下水道−」をテキストとして、席上配布する。

第63回 屎尿・下水研究会及び第52回定例研究会 報告

『東京・下水道よもやま話』

講師: 新保和三郎氏(元 本会会員)

 平成23年10月23日(日)13時30分から小平市ふれあい下水道館・講座室において、表記の定例研究会が開催された。当初、3月24日(木)に予定されていたが、東日本大震災後の計画停電等による交通事情の悪化を考慮して中止されていた企画を、日時と場所を変えて改めて実施したものである。講師の新保和三郎氏(元 本会会員)には、度重なる日程調整にご協力いただきましたことを、紙面を借りて感謝申し上げます。
 新保さんは昭和26年に東京都水道局下水課に入られた方で、戦後、東京が下水道事業を本格的に展開するに当たり模索した、行財政計画の軌跡を振り返っての感慨をざっくばらんに語っていただいた。
 冒頭で、テレビで放映された新保さんも出演している広報番組「こんにちは東京 地下1世紀1万キロ」(昭和57年、テレビ朝日、30分、)を上映したほか、テキストとして屎尿・下水研究会・文化資料-3「論考 −トイレと下水道− 」(第2〜3編は新保さんの論文)を席上配布した。
 講師の意向もあり、質疑応答に30分近くの時間を割くなど、バラエティーに富んだ活発な定例研究会となった。
 講演等の概要は、以下のとおりである。

1. 東京都提供広報番組「地下1世紀1万キロ」のあらまし
 この広報番組は東京の近代下水道開始100周年に当たっての番組で、
 新保さんが、神田下水(デ・レーケの指導のもと石黒五十二が設計)、長与専斎の松香私志、森鴎外の衛生談、中島鋭治による処分場を含む合流式下水道設計の実施、敗戦時には旧15区の80%が普及したことなどについて、
 李家正文さん(「厠考」の著者)が、厠、糞尿の肥料としての利用、西欧との違い、水洗化への認識の相違、財政難・戦争による水洗化の遅れなどについて、
 松下行雄さん(本会会員)が、水需要の増大、河海の汚染、オリンピック開催(昭和39)に伴う下水道工事の促進、45年の公害国会以後下水道事業が急伸、建設財源が膨大化、荒川以東の普及の遅れ、下水道普及で河川水質が改善、区部は昭和60年代に100%普及を目指すことなどについて、
 それぞれ神田、三河島、森ヶ崎などの現地に出向いて、インタビューに答える形で説明している。
 このほか、公共下水道の整備が遅れているため浸水被害が多発するほか、未水洗便所を多く抱えている地域(周辺6区)の担当課長や一般住民の方々も出演し、その早期実現を訴えている。

2.新保さんの「東京・下水道よもやま話」の骨子
@ 昭和26〜35年頃 : 職員数553名(昭和26)
 広報映画「汚いといったお嬢さん」(昭和25)を作り、下水道事業の重要性をアピール/当時の下水課は既存施設の維持管理で手一杯、23区内の面積普及率20%、処理場は三つ(三河島、砂町、芝浦)、ポンプ所15ヶ所)/ カーボン紙での複写、計算はソロバン、掛け算・割り算はタイガー手回し計算機で/ 汚泥運搬船を売却/ 現場へは自転車、荷車、都電で/ 昭和26年:大手町にトイレットショールームを開設(家庭雑排水を水洗水として利用する水洗トイレを展示)/ 昭和27年 :下水道使用料を改正し、それまでの水道料金の10分の3の一律の料率を、処理地区は10分の3、未処理地区は10分の2.5(その後に2に)とに分けた/ 下水道事業に公営企業法を適用(昭和27)/ 三崎町での下水道管への屎尿投入に関する統計を作成/ 岩波映画が下水道の映画(ナレーション:高橋圭三)を制作(昭和33)/ 清掃部局との合併の動きもあったが、水道局内で下水道本部へ(昭和34)、これに関連して、「下水道は上水道と一体である」、「下水道事業の在り方」、「東京都下水道財政の推移」などの諸論文の原文の執筆に関わる[席上配布の文化資料−3に復刻されている]/ 「東京の水道」(佐藤志郎著、昭和35年、都政通信社刊)の下水道の部の原文を担当。
A 昭和36〜41年の頃 : 職員数2527名(昭和39) オリンピック準備で下水道工事拡大へ/ 河川の暗渠化/ 下水道局に昇格(昭和37)/ 昭和39年:下水道料金を水道料金と切り離して徴収。
B 昭和42〜60年の頃: 職員数4913名(昭和58) 下水道予算の拡大、組織、人員の増加/ 職員の大量採用、宿泊研修、提案制度の創設 / 財政危機の中での事業の促進/ 昭和57年:東京の近代下水道開始100年。
C 昭和60〜現在 : 退職後会社勤務/ 油絵の趣味、美術団体活動/ 平成7年: 区部下水道100%普及(概成)/ トイレ便座の立派さ/ 水洗化便器もきちんと掃除を、男であっても座って。

  3. 文化資料-3 「論考 −トイレと下水道−」 の目次
 第1編 トイレの文化人類学的考察(平田純一 著)
 しゃがみ式と腰掛け式の分岐点/ しゃがんでいたことを証明可能か/ 洋風便器の苦難/ トイレの日欧比較/ 回虫の功罪/ 日本のトイレの紆余曲折/ かわやは正式名称か隠語か
 第2編 下水道事業の経営(新保和三郎 著)
 下水道は上水道と一体である−下水道事業機構の在り方−(下水道の使命、下水道事業経営の実態、上下水道事業の関連性、機構合理化の方向、清掃事業との関連、下水道事業の将来)/  下水道事業の在り方−東京都下水道経営の現状と将来−(下水道の使命、東京都下水道の沿革、下水道経営の現状、下水道経営の将来、下水道事業の会計について、上下水道の関連性について、各都市における下水道機構の現状、下水道事業と清掃事業との機構の在り方)/  東京都下水道財政の推移(市区改正による事業の成立、戦前における下水道財政、戦後における下水道財政、最近の論調をめぐって)/  東京都下水道受益者負担金制度について(下水道受益者負担金制度の意義、東京都下水道受益者負担金制度の実施経過、受益者負担金制度実施と地方公営企業並びに都市計画税制、使用料制度等の財政政策との関係、昭和29年度予算における下水道受益者負担金概算について、下水道受益者負担金制度実施上の諸問題)
 第3編 東京・下水道歴史散歩(新保和三郎 著)
 下水道の歴史に取り組む・新保和三郎氏/ 今に生きる−デ・レーケがつくった神田下水−/ バルトンの墓/ 昼休みの散歩 中島博士の墓地を訪ねて/ 中華なべ−小さな歴史の語るもの−/ 地下鉄工事現場から煉瓦造り下水管が出土
                                     (了)