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第45回 屎尿・下水研究会

「途上国のおけるトイレ建設から下水道の整備にいたる段階的整備について」議論する

石井 明男 氏

日時:平成19年3月30日(金)18:30〜20:30
会場:東京ボランティア  A会議室
講話者:石井 明男 氏(本会会員)
演題:「途上国のおけるトイレ建設から下水道の整備にいたる段階的整備について」議論する
内容:屎尿処理で本当は何が必要か。最終的には衛生状態を確保するにはオンサイトな方法が良いのではないかと考えるが、建設費用、建設期間で自力での建設は挫折してしまう途上国の事例も多い。
 そこで、建設中にも効果を期待でき、しかも建設費も少し安いという「段階的に整備」が提唱されているが、まだ実現には至っていないように思う。この段階的整備について、問題点等を議論してみたい。




「途上国のおけるトイレ建設から下水道の整備にいたる段階的整備について」議論する

石井 明男

1.途上国で下水道を敷設するには
2.過去の下水道敷設の推進力となったものは
3.下水道の段階的整備
4.何故、段階的整備が普及しないのか

途上国の下水道整備に関する段階的整備について

 3月30日に行なわれた例会では、途上国で下水道を現実的にどのような手法で整備していったらよいのかということを議論しました。

1.途上国で下水道を敷設するには

 途上国特にアジアには、人口が集積した大都市が多いことはご存知の通りです。その人口密集地でし尿処理を行なうには、何が最終目標かによりますが、今回は下水道施設がよいのではないかということを前提にして話を進めました。
 一般的に下水道を整備するには、多額の費用と時間を要し、効果が現れるには処理場も管渠も完成していなければならないので、時間も掛かり豊かでない途上国において自力で下水道を整備するのは大変なことです。
 トイレについては、安価で現地でも製作できるものにしようとか、様々ないアイディアがあります。これに対して、途上国が自力で下水道を整備しようとすると、はたと考え込んでしまいます。
 私が1992年ごろJICAの廃棄物の専門家をしていたときに、同僚の下水道専門家は、下水道の導入にあたって@経済的問題、A技術的問題、B制度的問題、C市民の意識の問題などの壁に苦労されていました。

2.過去の下水道敷設の推進力となったものは

 日本における近代下水道建設のきっかけとなったのは、明治初期のコレラの蔓延だといわれています。しかし現在は途上国といえども、生水は飲まないとかの衛生知識が経験的に定着し、伝染病に対する医療も発達し、下水道がないからといっても疫病が爆発的に広がることはないと思います。
 下水道がなく、し尿で河川が汚染されていても、生まれたときからそのような環境にいればそれほど深刻になる人もいません。
 このようなところでは、衛生教育から入らざるを得ないので、ゴールはとても遠い気がします。必要性が理解されていない国で、財政的なダメージが少ない方法で下水道を敷設しなければなりません。
 下水道利用の先輩国としては、これらのことをよく考えた上で技術援助を実施しなければ、住民にも理解されないし、やるのも大変です。

3.下水道の段階的整備

 その壁を少しでも低くするアイディアとしては、「下水道の段階的整備」というアプローチがあります。私は、段階的整備を取り入れJICAで実施した、インドネシア国ウジュンパンダン市の「下水とごみ開発計画」(1995年)の結果を、その後もずっと考えて続けています。
 段階的整備とは、トイレをいくつかまとめてセプティックタンクにつなげて、それをまた、幹線につないで最後に処理場につないで効果を出しながら徐々に完成させるというやり方です。 (管渠の敷設は、スモールボア、シャロースーワーなどあります。処理場についても段階的な整備のやり方があります。)

4.何故、段階的整備が普及しないのか

 この日議論されたことは
 @ 段階的に整備することはできると思うが、この手法だと安く建設できるというのは幻想ではないか。二重投資は避けることにして、効果を出しながら建設していくだけにとどめるべきではないか。
 しかし、費用が安くならないと理解が得られないかもしれない。
 A はじめから大規模に始めないで小さな区域に限定し、何とか推進するのが良いのではないか。とにかく実施して効果を実感させることが現実的ではないか。
 B 段階的整備の手法には大きな間違いはないと思うので、そのまま推進したらどうですか。ただ、複雑なので分かりやすい説明を考えて、理解を得るようにするのが良いのではないか。
 C 住民への環境教育が先で、民意が熟してから始めるのが良いのではないか。効果的な住民への説明方法があるのかが課題である。
 D 段階的といっても順序が重要ではないか。このやり方だと時間がたって都市がさらに巨大化して、そのときにはもう幹線も敷設できず、処理場用地も確保できず、結局手遅れにならないか。
等でした。