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第37回 屎尿研究会

大正8年の屎尿問題−その定量的検討−

稲村 光郎 氏

日時:9月2日(金)午後6時30分〜
会場:セントラルプラザ 10階A会議室
演題:大正8年の屎尿問題 −その定量的検討−
講師:稲村光郎氏(本会会員)
内容:屎尿が有価物から廃棄物へと変貌する節目となる大正8年頃の屎尿処分問題を、屎尿の発生量、取引量、掃除賃、肥料としての価格などに基づき定量的に検討する。




大正8年の尿尿問題 −その定量的検討−

 9月2日(金)、東京・飯田橋の東京ボランティア・市民活動センターにおいて、第37回の尿尿研究会例会が行われました。講話者は本会運営委員でもあり、また「ごみ文化研究会」の幹事でもあります稲村光郎氏にお願いをしました。
 講話は、演題にもありますように、資料として各種のグラフや表を使っての、有価物であった尿尿が廃棄物祝されるようになった転換期(大正8年)における、尿尿を巡る定量的な検討となりました。講話の骨子は次のとおりです。
 @労賃(日雇い)が、第一次世界大戦(大正3年〜大正7年)を契機に、5年間で3倍にも跳ね上がるような上昇をし、以後も物価低落にかかわらず暫くは下がらない状態となる。
 A東京府内の尿尿の消費量は、大正年間を通じて緩やかな伸びを示している。
 B一方、東京市中心部の尿尿の輸送先を昭和4年のデータでみると、東京府内を1とすると、他県が3となっており、他県への依存度が高い。
 C東京での肥料の価格を大正8年でみると、含有窒素成分1貫当たりでは、人糞尿2.60円、硫酸アンモニア6.82円、大豆粕6.04円などであり、人糞尿は比較的割安である。
 D千葉県での大正8年のデータでは、前年より尿尿の価格が高騰したため消費量が4割も減少している。またその単価は東京に比し約3倍であり、これは他肥料と比べ安価とは言えない。
 E硫酸アンモニアは、全国的にみると大正11年までは年4万トン(窒素換算)以下の消費量で、これは尿尿の半分以下であり、尿尿と競合するのはそれ以後である。
 これらのことを総合的に勘案すると、含有する肥料成分の割にはかさばる尿尿は、大正半ばに至って、他県への運搬に要する人件費に見合うだけの販売価格を維持できなくなり、次第に廃棄物化していったものと考えられる。

(尿尿研究会会長 地田 修一)