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第35回 屎尿研究会

劇映画に見る下水道の世界

安彦 四郎 氏

日時; 平成17年6月3日(金)18時30分より
場所; セントラルプラザ10階 A会議室
講演者;安彦 四郎 氏(元 東京都下水道局)
演題; 「劇映画に見る下水道の世界」
内容; 邦画、洋画に精通する講話者が、下水道施設を舞台にした劇映画についてビデオを交えながら解説し、論評を加える。




劇映画にみる下水道の世界

 平成17年6月3日(金)、東京・飯田橋の東京ボランティア・市民活動センターで「第35回屎尿研究会例会」が開かれました。今回のテーマは「劇映画にみる下水道の世界」です。日本の映画ばかりでなく外国映画にもくわしい安彦四郎氏(現日本下水道協会、元東京都下水道局)に、特にお願いをし、劇映画に登場する下水道について、4本のビデオを放映しながら解説していただきました。
 まずイントロとして、下水道が登場する映画を強奪編、脱獄編、怪奇編、戦争編に分類しての例示がありました。日本映画で下水道を舞台にしたものが少ないのは、大口径の下水道管が少なく撮影技術上むずかしかったからではないかとの指摘がありました。外国映画に登場する下水道は、大きな運河や川を覆蓋した下水道で撮影されたものが多いとのこと。
 次に、ロンドンやパリの下水道の歴史についての話があり、ご自身が見学されたパリの下水道博物館の紹介もありました。
 いよいよ、ビデオ化された映画のさわりの場面の鑑賞です。外国映画を3本、日本映画(劇仕立ての広報映画)を1本。以下、さわりのさわりを紹介します。
 @「レ・ミゼラブル」(原作:ビクトル・ユゴー、10数回 映画化) 舞台は、セーヌ川沿いのパリの大環状下水道。パリでの市街戦の最中、偶然見つけたマンホールから下水道に潜入し、重傷のマリウス(共和主義者)を背負い、下水道管内を逃げ歩くジャン・パルジャンの姿は圧巻です。数時間後にセーヌ川への脱出に成功し九死に一生を得ます。
 A「第三の男」(1952年、キャロル・リード監督) ウィーンの下水道が舞台。越流堰と、ドナウ運河に注ぐ地下鉄並の大きさの放流渠(川を覆蓋)が映し出されます。この中を、オーソン・ウェルズ演じるペニシリン密売人が警察に追われ、逃げ回ります。侵入したマンホールの蓋は、花弁のように何枚かに分かれて開く珍しい形式のもの。捜査員のカン高い声が管渠の中にこだまします。
 B「地下水道」(1957年、アンジェイ・ワイダ監督) 下水の臭気がスクリーンから漂ってくるような映像。舞台は、第二次世界大戦下のポーランド・ワルシャワの下水道。武装蜂起した地下抵抗運動者たちが、雨水吐を通って河川への放流口にたどり着くが、そこには頑丈な鉄格子がはめられています。さらに、マンホールの立ち上がり部には爆弾が仕掛けられています。汚水とガスの発生に悩まされながら、最後まで友軍による解放を信じていたが…。
 C「汚い!といったお嬢さん」(1950年、東京都製作)劇仕立ての下水道広報映画。叔父さんさんから勧められた縁談を、相手が下水処理場で働いていると聞いてあっさり断ったお嬢さんが、下水道の役割とその大切さを次々と説明されて、仕事の重要性を理解し、ハッピーエンドに終わる、というものです。散水ろ床、パドル式ばっ気装置、シンプレックス式ばっ気装置などとともに、50数年前の東京のなっかしい風景が写しだされます。

(屎尿研究会会長 地田修一 記)