屎尿・下水研究会

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第22回 し尿研究会の定例会

日時 2003年9月5日(金曜日)18時30分から20時30分
場所;東京ボランテイアセンター・市民活動センター
     セントラルプラザ 10階 会議室
講演者  関野 勉 氏(家庭紙研究家)
講演タイトル 「トイレのグッズ」
内容: 関野さんが世界各地、日本の各地から長年掛けて集めたトイレに関する珍しいグッズ、人形、おもちゃ等々の紹介です。これは見なければ損です。




「トイレのグッズ」を聴いて

 平成15年9月5日、久しぶりに、し尿研究会例会に参加することができました。ここ数年残業が多い職場 におりましたが、今春偶然にも会場である飯田橋のセントラルプラザ内に異動になり、多少の時間の余裕ができてきていたところ、7月の「ふくりゆう」で例会の開催を知りました。関野勉氏によるテーマは「トイレのグッズ」。思わず「やった−!」と喜んでしまいました。
 というのも以前東京都下水道局で文化会機関誌の編集委員をしていたことがあり、トイレ空間の取材をきっかけに、トイレ関係の話には、とても興味をもっていたからです。
 わくわくしながら会場に入ると、テーブルの上に様々なトイレのグッズがたくさん並べられていました。
 「椅子穴開き型便器のミニチュアや糞型のループタイを知り合いの方や友達に作っていただいた。」という話にまず驚きました。お店で購入するだけでなく、お金を払ってミニチュアまで作ってもらうなんて、本当にトイレグッズを愛していらっしゃるんだなあと感じました。
 日本、中国、ヨーロッパの人形や飾り物のほか、ギリシアの尻拭き用海綿などのトイレ用品まで、「本当にいろんなものがあるんだなあ」と、感心しながら拝見させていただきました。
 特に、イタリアのハイタンク洋便器のミニチュアは、長さが15cm位なのですが、持ってみるとズシリと重さがあってビックリ。値段も47000円したとのことでまたまたビックリ。作りも精巧なものでした。
 また、製造をやめてしまったために今では手に入らない日本製のトイレットペーパーといった貴重なものや、蓋を上げると放水される香港製の温水洗浄便座のおもちゃなど手の込んだものもたくさんありました。ウズベキスタンの排尿器は、ベッドに赤ちゃんを固定するために使われているものだそうで、文化の違いを知ることができました。
 実物を実際に手に取らせていただきながらお話を伺い、また、お話の後も手に取って見させていただいてとてもありがたかったです。
 終了後の懇親会で、グッズを求めて海外に行くのではなく、旅の途中で『「ニオイ」のする方へ足を運ぶとグッズを売っているお店があったりする。』とのお話を伺いました。経験から来る勘もあるのでしょうが、トイレグッズが関野さんを招いているようにも感じられました。
 相思相愛のトイレグッズ。今回見られなかったものや今後新たにコレクションに加わるものを見せていただくのが楽しみです。関野さんどうもありがとうございました。

鈴木 直子



トイレのグッズ

関野 勉
@ 日本
A ベルギー
B スペイン
C ウズベキスタン
D スウェーデン
E オーストリア
F イタリア
G ギリシャ
H エジプト
I ノルウェイ、フィンランド
J フランス
K ポルトガル
L 中国
M マレーシア

 私の手持ちの「トイレグッズ」を写真等も含めて100点ほど展示し、研究会の皆さんにご覧いただき、展示品の入手経路や故事来歴を披露することにします。
 そもそも私がこの様なトイレグッズを集め出したのは、当時、トイレットペーパーやテイッシュペーパーを製造販売する会社の販売企画課なる部署に在籍していて、紙特にトイレットペーパーの歴史を知りたくていろいろ調べ始めていた頃でした。紙の専門書にはそのような記述は全くなく、それではとトイレ関連の書をめくっても満足するような資料もないのが実情でした。
 そのような頃、TVのクイズ番組でメキシコのウンチ人形(お尻に火薬を詰めて火を付けると、ウンチがニョロニョロと出てくる男女の人形)のことを知りまして、東京・御徒町でその人形を火薬とともに2体買い求めたのが最初であったと記憶しています。それが多分、昭和60年頃ではなかったかと思います。少し後に、新聞にそのウンチ人形に使用する火薬に水銀が使われているとかで輸入禁止になったとの記事があり、「これはそのうちに貴重品にな る」と思いました。
 現在、私の手持ちの「トイレグッズ」は、ミニチュアものと、使用していた現物などを合わせて百点はあると思われます。実際に、現物は箱などに入れてあり、普段は飾っていないので記憶の中にあるだけです。
 「うんち大全」(高遠弘美訳 1999年原書房刊)にもフランスのトイレグッズについての記事が十ページ余にわたって書かれています。
 2002年には、トイレグッズではありませんが、(株)タカラから、若い夫婦の子供さんのトイレットトレーニング用として「おむつのチーちやん」と「おむつのチーくん」が売り出されていました。生産は中国です。それでも、二つで8千円もする大掛かりな製品です。
 それでは、本日展示した物のいくつかについて、これから少し解説いたします。

@ 日本

 高知市播磨屋橋にあるお土産店で見つけた「つればれ」女性の立ちしょん人形です。大小があり、これに付属して夫婦のつれしょん人形、女の子のしゃがみスタイルの人形もあるのですが、これらは高知市にはないようです。
 東京で作っているものでは革製のキーホルダーの「洋便器」があります。文具店でも販売されています。東京で手に入るのは民芸品店や縁日の露店で、ほかには玩具店等にもある時があります。
 どこでも、いつでも手に入るかと言うと、それがなかなか手に入らないのです。私が手に入れたのは、探して手に入れた物もありますが、歩いていて偶然に見つけるのが大半です。ですから、お金が足りずに買えないこともありました。とにかく、犬のように見て歩くことです。
 居酒屋で知り合った知らないお客さんが、私に椅子型と本型の腰掛け便器を作ってくれました。もちろん、椅子の下には「オマル」が入っています。全部手作りです。
 また、トイレ研究仲間の友人に糞型の棒タイもいただきました。糞には蝿がとまり、金色に塗ってあります。
 晴海に見本市会場があった頃に、何かの見本市を見学に行きましたが、プラスチックの実演をやっている場所で、サントリーのダルマ壜の看板を作っている会社のデモンストレーションがあり、お尻の看板をたくさん作っていました。後どうするのかと尋ねたところ、捨てるとのことでしたので頂いてきました。
 今ではもう生産していないトミーのミニチュアカーの「バキュームカー」もあります。金沢の友達からは「厠神」を仏具店で買い求めて送っていただましきた。
 パリで入手したと言って、日本の大正時代の商家の便所掃除の絵葉書を友人からいただきました。ほかにも絵葉書はいろいろあります。

A ベルギー

 小便小僧は有名ですが、日本ではミニチュアでも手に入りません。ブリュッセルでは店にたくさんの種類の小便小僧が売られています。私も何種類かを買い求めましたが珍しいのはキーホルダーの小便小僧です。
 小便小僧型のチョコレートはありましたが、小便小僧型のビールやワインの壜はありませんでした。また、小便少女のミニチュアもありませんでした。

B スペイン

 子供向けの雑誌「たくさんのふしぎ」でスペインのバルセロナで「うんち人形」が売られていることを知り、丁度その年の六月に遅れた定年になり、海外旅行でもと考えていた時でしたので、さっそく出かけました。
 日本から付いてきた添乗員に「うんち人形」のことを尋ねたところ、知らないと言われましたが、現地の日本人の通訳兼ガイドの女性は知っており、買い方を指南してくれました。その後、バルセロナ以外の土地でも「うんち人形」のことを尋ねましたが、だれも知りませんでした。
 何か民俗学的な「いわれ」があるのではないかと思いますが、資料が見つかりません。先ほど話しましたメキシコの「うんち人形」は、スペインのものが原点ではないかと思われます。

C ウズベキスタン

 中央アジア一帯で赤ちゃんの排尿器として使用しているもので、おむつを当てがわれない代わりに、これを当てられベットに括りつけられるということです。ウズベクの友人から送ってもらったものです。その後、中国のカシュガルの職人街でも見つけました。「横になって食べよう」という書物にくわしく解説されています。
また、モスクの売店では、「オマル」に座ってイナイイナイバーをしている木彫りの小さな置物を見つけました。
 イスラムの国では、トイレマナーについての大変厳しい掟があります。「ハデイース」(イスラムの規範書)には、トイレのマナーが一章に渉って書かれています。

D スウェーデン

 1989年に日本トイレ協会が主催した第1回ヨーロッパトイレ事情調査団に加わって訪欧した時に、ストックホルムで日本円で確か百円で買ったプラスチックの洋便器です。

E オーストリア

 日本トイレ協会の第2回ヨーロッパトイレ文化調査団に参加した折に訪ねた、ザルツブルグ郊外の便器工場のラウフェンで頂いた「1850年代のトイレットペーパーの復刻品」です。B六判型の本の形をしたもので、左側にミシン目があり、中にはトイレに関する絵が印刷されています。このコレクションは、INAXが展示したことがありますので、ご覧になった方もあるのではと思います。
この時、見学記念に陶器製の洋便器のキーホルダーを頂きました。

F イタリア

 イタリアの北部をツアーで回りました時、ベネチュアの運河でゴンドラに乗られると思いますが、私が乗ったゴンドラの舳先の下にトイレットペーパーがふわふわしているのを見付けて写真に撮ろうと思いましたが、動いていて写せませんでした。「ベネチュアには下水道がない」ということを、ベネチュア大学出身の日本語ガイドの女性から聞いていましたので頷けました。
 ローマでの自由時間に、私はブランド品に興味がありませんので、おもちゃ屋を覗いていたところ「ハイタンクの洋便器」のミニチュアを見付けました。さっそく購入し、バスの中で皆に見せたところ爆笑となりました。

G ギリシャ

 アテネから船でクルーズすると、どこにでも売っているのが「海綿」です。昔は、尻の始末に地中海地方の各地で使用していたと言われています。

H エジプト

 ピラミッド見学の途中には、「スカラベ」がたくさん売られています。その店の脇の砂漠には石があまり落ちていないのですが、適当な石があることがあります。それが、彼らの尻始末用の小石です。「今でも使用している」とガイドが言っていました。モロッコでも使っているとのことです。

I ノルウェイ、フィンランド

 ノルウェイで、氷河見物に行った帰りの売店で見つけた「トイレの壁掛け」です。なかなか立派にできています。
この後、フィンランドの北部のホテルで、男女のトイレのドアに立派な飾りマークがあるのを見つけました。これは写真のみです。

J フランス

 何回か出かけているのですが、「うんち大全」にあるような品物にお目にかかれません。というのも、あまり蚤の市のような所に行っていないからだと思います。その代わり、紙関係の研究仲間が買ってきてくれたのが、「オマル」の新品です。今でも作っており、使っている人がいるとのことです。
 ほかに、珍しい絵葉書がたくさんあります。また、フランスのトイレの文化史に関する著作があるゲラン教授から頂いたエスカルゴ(男性用の小便所)の珍しい写真集もあります。

K ポルトガル

 ツアーで観光地のお土産屋さんの中を覗いたところ、綺麗な模様のオマルのセットが飾られていて、店頭では何種類かが販売されていました。今でも、まだ使用している人たちがいるわけです。店内の写真は、写してあります。

L 中国

 西安では蓋つきと蓋なしの焼き物のオマルを、楽山では小さな本屋のその家族が何年か前まで使用していた木の「馬桶」(マートン。オマルの一種)を、そして蘇州では新婚さん用の「馬桶」を買い求めました。今日は持ってきていませんので、写真のみです。
 中国で珍しいのは、股割ズボンを履いた子供の人形です。最近は、日本の業者がトイレグッズを中国に注文してつくらせ、日本で販売しています。

M マレーシア

 空港の売店では民芸品として金属製の男女のトイレスタイルのお人形を、そして街のお土産屋さんでは糞鎮と言われる鉄製の物が販売されてます。この糞鎮を最初見たとき、お菓子のように見えました。
 民俗学的な研究の対象とするには、まだ数が足りなくしかも種類も少ないと思いますが、買った当時は時代の情勢を表していると思いました。
 これらのグッズを作って販売している方たちの話を聞いたことはありませんが、日本でも最近ではほとんどが洋便器型の物で、和便器型の物が見当たりません。昔は、和便器型の灰皿等がいろいろあったようです。