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第9回 し尿研究会の報告

し尿処理技術の動向

河村清史
し尿処理の現状
し尿処理の歴史
1.昭和20年代とその前
2.昭和30年代
3.昭和40年代
4.昭和50年代
5.昭和60年代
6.現在
代表的なし尿処理方式
1.処理フロー
2.処理性能
3.浄化槽汚泥への対応
汚泥再生処理センターと資源回収について
1.汚泥再生処理センター
2.汚泥再生処理センターの性能指針
まとめ

 ただいまご紹介いただきました埼玉県環境科学国際センターの河村です。
 本日お話しするテーマは「し尿処理技術の動向」ということになっておりますけれども、現状だけではなく少し歴史的なところも踏まえたお話しをさせていただきたいと思います。
 日本水環境学会というのがございますけれども、今日お話する内容はそこのセミナーでお話ししましたものがべースになっております。それと、後でお話ししますけれども、最近、し尿処理施設が国庫補助の対象からはずれまして、汚泥再生処理センターに変わってきております。これにつきましては新しい情報としてお話しできると考えています。

し尿処理の現状

 当然ながら皆さんはご承知だと思いますけれども、し尿は非常に汚濁負荷が大きいものであると同時に、人の腸管系の病原微生物を含有している可能性が非常に高いものです。
 わが国の場合は、ご案内のように色々な形でし尿を処理するシステムができあがっておりますけれども、世界的な観点からあるいは地球規模的な観点から見ますと、非常に限られた地域でのみ下水道で対応されています。例えば、日本の場合ですと現在50%強の人は下水道を使っておられますけれども、世界中で見たら恐らく10億人を切るのではないかと想像します。そうなりますと、残り50億人以上の人のし尿の処理はどうなっているのかという問題もあるかと思います。
 他の地域では、下水道で収集するが未処理で放流するとか、あるいは生活雑排水と併せて腐敗槽で簡易処理したり、地下に浸透させたりするということがなされています。貯留という形でただ穴に溜めておくこともあります。
 そういう状況に比べまして、日本では下水道、浄化槽、し尿処理施設というものがありまして、処理水質の良し悪しは別としまして、基本的には大方のし尿が衛生的に処理されるようになっています。その中の一つのし尿処理施設について、今日お話しします。
 今日お話しします話題を紹介しますと、まず衛生処理への対応と処理水質の高度化があります。それから、最近では下水道の方が伸び率は高いのですけれども、単独処理浄化槽を中心とする浄化槽が広がってきております。このため、し尿処理施設に搬入される物について浄化槽汚泥の割合が高くなってきていることから、それへの対応が必要になってきています。これについてお話しします。それから、最初に申しました汚泥再生処理センターにつきましては、処理対象にし尿あるいは浄化槽汚泥だけではなく家庭の生ごみ等まで含めることによって資源化を図ろうという形へ移行してきておりますが、この辺のところをお話しさせていただこうと思っております。
 それではし尿というものはどういう性状であるか、あるいは浄化槽汚泥はどういうものであるかということで、ここに一つの資料をご紹介します(注:表1参照)。通常用いられる汚濁指標で言いますと、BODで10,000ミリグラム/Lくらいが平均値としてある。浄化槽汚泥では4,500ミリグラム/L程度であります。
 もう一つ重要なものと思われますのは、アンモニア性窒素を主体とする窒素、すなわち全窒素、それから全リンということが言えるかと思います。これらが非常に高い濃度で含まれています。し尿あるいは浄化槽汚泥はある種の資源であると見ることができます。もちろん、BODで表現されるようなカーボン源でもありますが、同時に特に今申しました窒素とリンの資源です。リンの場合は、経済的な採掘という観点で見ると枯渇資源であると言われるものですけれども、し尿1リットル当たりに約550ミリグラムを含んでいるという意味で資源であるということになるかと思います。
 それでは、わが国でどれだけのし尿の量が出ているかということを見てみます。収集し尿ということでいいますと、大体1人1日1.5リットル程度を見ればいいと思います。総人口が約1億2千数百万人(注:1994年度末)ですから、一日に処理しなければならない量は約19万キロリットルになります。それから、収集し尿の平均BOD濃度が先程の10,500ミリグラム/Lだということにしますと、処理すべきBOD量は一日当たりで約200万トンになります。
 実際それを先程言いました色々な方法でどういうふうにやっているかということを示しているのがこの図です(注:図1参照)。
 赤の点で示しております線(注:上に下水道人口と記した点線)が下水道人口で、こちら(注:下に浄化槽人口と記した線)が浄化槽人口です。1985年ぐらいまではほぼ同じような割合で対象人口が増えていたのですけれども、最近では下水道の方は伸び率がコンスタントに続いておりますが、浄化槽人口はこの辺り(注:1987年頃)で伸びが止まりまして、現在約3千数百万の人達が浄化槽を利用しています。浄化槽の設置基数は8百数十万基あると言われております。その両者が水洗化人口ということで、総人口から水洗化人口を引きますと、これ(注:上に非水洗化人口と記した点線)が非水洗化人口です。生し尿を対象としなければいけない人の数です。それから、実質上浄化槽汚泥というのは、集めたあとは大半をし尿処理施設で処理しておりますから、非水洗化人口と浄化槽人口を足したこの赤で示しております線(注:上に非水洗化人口+浄化槽人口と記した点線)が、し尿処理施設で対応しなければいけない人口となります。具体的に言いますと、1993年度では約7千万の人達のし尿あるいはそれに由来する浄化槽汚泥をし尿処理施設で対応したというふうになっております。

し尿処理の歴史

 このし尿処理がどのような変遷をたどってきたかをお話します。し尿処理の技術的な変化・革新といいますのは、大体10年単位で生じております。後で具体的な図をお見せしますけれども、そういうことから言って昭和20年代、30年代、40年代という時代区分でどう変わってきたかということをお話します。

1.昭和20年代とその前

 最初は「昭和20年代とその前」ということです。皆さんご案内のようにし尿は昔は非常に貴重な肥料であって、900年代に作られた延喜式と言う本にも既に肥料として使うということが記してあるとのことです。戦前まで広く使われておりまして、寄生虫症の原因という意味等での問題はありましたけれども自然の中での循環をしていたということです。
 しかし、第二次世界大戦後になりまして、寄生虫症などの問題から進駐軍が農業利用の中止を勧告したり、我々自身が生野菜を食べるような食生活に変わったりしたということ、農民がし尿の散布を嫌ったりしたとか、また安価な化学肥料が普及してきたとかということがありまして、し尿の農業利用は非常に減っていきました。
 それに加えまして、戦後復興で非常に多くの人達が都会に集まってきたことで余剰のし尿が非常に多く出てきて、それを川とか山等に捨ててきたということがありまして、それではということでし尿を集めて集中的に処理することが検討されました。
 わが国で最初の今言うところのし尿処理施設は昭和28年に造られましたが、これは嫌気性消化処理方式と言うものです。その後、昭和29年から国庫補助の対象になったということで、「し尿処理の幕開け」と言えるかと思います。

2.昭和30年代

 昭和30年代になりますと、嫌気性消化処理方式が非常に普及したわけですけれども、これはご案内のように非常に長い処理時間がかかる。そういうことと併せて、広い施設面積が要る、また現在のような色々な形の対環境対策がなされておりませんでしたので、非常に臭気の問題等がある。そういう色々な問題がありまして、化学処理方式とか酸化処理方式に変わってきております。
 化学処理方式は凝集剤を使って固液分離した後に生物処理する形で、一時ありましたけれども、昭和42年以降は建設されなくなり、基本的に酸化処理方式ということで、現在言いますところの好気性処理を使った方法になっております。

3.昭和40年代

 昭和40年代に入りまして、新たに湿式酸化処理方式というものが出てきております。それと、先程言いました酸化処理方式が非常に普及してきた。ただ、ご案内のように、昭和40年代の後半になりますと公害問題とか環境保全ということが非常に大きく言われるようになりました。し尿処理に対しましても高度な処理をすることが要求されるようになっておりまして、溶解塩類や溶解性有機物を処理するための凝集分離とかオゾン処理とか活性炭吸着が取り入れられるようになってきております。

4.昭和50年代

 昭和50年代になりますと、CODの総量規制等が始まりまして、凝集分離設備を設けるとか、あるいは窒素除去としての標準脱窒素処理方式という脱窒素も含めた処理方式が加わってきております。先程の浄化槽汚泥に対しましては、昭和56年に浄化槽汚泥に対する方式が加わってきました。昭和55年以降は標準脱窒素処理方式が主流になっております。
 先程はお話ししませんでしたけれども、嫌気性消化処理方式にしても好気性消化処理方式にしても、どこかの段階で希釈水を使います。10,000ミリグラム/LのBODのものを処理するわけですからやはりどこかでかなり希釈をする必要があるということで、20倍前後の希釈水を使っておりましたけれども、標準脱窒素処理方式につきましてはそれを10倍前後に抑えたというのが特徴であります。
 窒素につきましては、色々な問題、閉鎖性水域の富栄養化とか稲の徒長とかの他、分析上で亜硝酸によってBODの異常な値が出るとか、処理上でアンモニアに起因するアルカリ度が凝集処理におけるpH調整用の薬品を消費するとか、オゾン処理において亜硝酸がオゾンを消費するとかといったことがあり、ただ単に環境だけの問題ではなく他の問題も含めて対応していこうということになったのだと思います。
 また、昭和48年のオイルシヨックなどを契機としまして、省エネルギーとかコンパクト化とか、あるいは先程の希釈率を小さくする低希釈化ということが言われるようになりまして、高負荷脱窒素処理方式というものが出るようになりました。これは、MLSS濃度を非常に高めまして高いBOD負荷でも対応できるようにしようということで、希釈倍率を2倍から3倍ぐらいまでに下げることになったわけです。
 ただ、そういうふうにMLSS濃度を非常に高くすることにつきましては、それ相応の曝気装置の工夫とか、反応槽の形状の問題とか、あるいは固液分離の問題とか、当然のことながら色々な問題が出てくることになりました。

5.昭和60年代

 昭和60年代になりまして、高負荷脱窒素処理方式の課題の一つであります高MLSS濃度での固液分離への対応策として、今では下水道、あるいは水道、あるいは農業集落排水施設や浄化槽などでも広く使われております膜分離技術、限外ろ過膜とか精密ろ過膜と言われる膜を用いた分離技術の導入を考えるようになりまして、最初のものは昭和61年にし尿処理の分野で導入されております。
 その後、私が前におりました国立公衆衛生院と廃棄物関係の財団であります財団法人廃棄物研究財団が厚生省の研究予算をいただきまして、官民共同研究をする中で新しい膜分離高負荷生物脱窒素処理方式というものを導入することになりました。これは固液分離に膜分離技術を使うことになっております。
 これが非常に駆け足で見ましたし尿処理の歴史になるわけです。

6.現在

 現在は、最初にも申しましたが、有機性廃棄物のリサイクルを拡大しようということ、また処理の対象を拡大しようということから、平成9年度から、平成9年度はごく一部で10年度から本格的になったのですけれども、従来のし尿と浄化槽汚泥を対象とするし尿処理施設に対しまして国庫補助を付けなくなりました。そして、新たに処理対象物をし尿と浄化槽汚泥以外のもの、端的に言いますと家庭の生ごみ等にまで広げて、なおかつただ汚水を衛生処理するだけではなく、し尿や生ごみ等が持っている資源あるいはエネルギーを回収しようということを機能とする汚泥再生処理センターに対する国庫補助が始まりました。もちろん、汚水の処理には今まで培ってきたし尿処理技術が適応されております。
 ごく最近ですけれども、今年(注:平成12年)の10月6日に汚泥再生処理センターに対しまして、今までのし尿処理施設の構造指針に代わって、性能指針が通知されました。これについても後程簡単に触れさせていただきます。
 先程最初の方で申しましたけれども、し尿処理方式は10年ごとで区切られる、その具体的な現れがこの図(注:図2参照)です。縦軸は年度ごとでの新しく造ったあるいは更新したし尿処理施設の事業量をキロリットル/日で示しております。横軸は昭和29年度からの年度です。
 薄い色で示していますのが嫌気性消化処理方式です(注:図2の凡例参照)。最初に始まった処理方式の事業量がこういう形で推移しています。これを約十年後に追い掛けるようにしてある程度の量が出てきておりますのが好気性消化を使った処理方式(注:図2では酸化処理方式としている)です。一部化学処理方式もありますけれども、これは廃れてきて昭和42年度からはなくなっています。
 その後には湿式酸化が出てきておりますが、メインとしましては嫌気性消化処理方式、好気性消化処理方式、その後で始まった標準脱窒素処理方式で、これら処理方式の変化が見て取れます。
 また、標準脱窒素処理方式を追い掛けるようにして増えていますのが高負荷脱窒素処理方式で、MLSS濃度を高くしてコンパクト化するというような方式です。これは先程言いましたように固液分離の観点から非常に難しいところもありまして、膜分離を導入した方式が出てきました。膜分離は今かなり主流になっておりますけれども、こういう形で十年ごとに新しい技術が開発されてきました。
 ご承知のように、し尿処理施設は一番大きなものでもせいぜい200キロリットル/日とか300キロリットル/日というレベルの施設です。小さいものですと100キロリットル/日とか数十キロリットル/日あるいはもっと小さなものですので、下水道の終末処理場などと違いまして新しい技術をかなり適用しやすいということがあります。
 それと、下水道でのことは詳しく知りませんけれども、厚生省がやってきましたし尿の補助金の交付の仕方、技術への対応が関係して、十年ごとに新たな技術が生まれてきたものと思います。

代表的なし尿処理方式

 先程は具体的な技術の内容を紹介せずに方式だけを述べましたので、お分かりにくいところがあったかと思いますけれども、代表的なし尿処理施設の方式の構造といいますか、フローをここで示します。

1.処理フロー

 最初の嫌気性消化処理方式は、始めに嫌気性消化処理しまして、その後消化脱離液を活性汚泥法で処理して沈殿・固液分離し消毒して流す、消化汚泥とか余剰汚泥は汚泥処理をする、というある程度シンプルな形でした(注:図3参照)。
 (図3〜7は文献5、6より作成)
 好気性消化処理方式は、嫌気性消化の代わりに好気性消化を用いており、一度固液分離して、さらに活性汚泥法処理を行って固液分離・消毒という形になっております(注:図4参照)。
 標準脱窒素処理方式は、まず硝化及び脱窒素のための槽を設けまして、一段では不十分だということで二段目も設けて沈殿して消毒で流すという形の処理になっております(注:図5参照)。
 さらに、高負荷脱窒素処理方式になりますと、硝化・脱窒素を行った後に固液分離をしまして、固液分離が十分いかない部分に対して凝集を行い、固液分離の機能をさらに向上させて処理をするという形になっております(注:図6参照)。
 固液分離の所に限外ろ過膜あるいは精密ろ過膜を入れたものとして、膜分離高負荷生物脱窒素処理方式がございます。これにはいくつかの方式があるのですけれども、典型的に使われているものとして膜分離高負荷生物脱窒素施設「その1」方式を示しております(注:図7参照)。
 まず受け入れた後に硝化・脱窒素さらに二次的な硝化・脱窒素を行いまして、生物処理をした後の固液分離に限外ろ過膜を使っている。さらに限外ろ過膜の所で、SSとかBODのほとんどの部分は除去できますけれども、その後に凝集剤を入れましてCODとか色度とかの残余した物を取り除きます。凝集させた後につきましても固液分離に膜を使う方法を使っています。最後に、色度とかCODをさらに取るということで活性炭を使っております。
 この方式ですとプロセス用水としましたいくらかの水が加わりますけれどもほとんど無希釈で、先程示したようなし尿あるいは浄化槽汚泥に対しまして、BODおよびCODは10ミリグラム/L以下、窒素も10ミリグラム/L以下、色度で30度以下、リンで1ミリグラム/L以下という処理が十分かなえられます。

2.処理性能

 処理性能についてご紹介します。これは(注−表2参照)、膜分離技術が入る以前の段階の処理方式における処理水質を示していますけれども、約280施設でのデータを基にしております。項目によってデータ数が違いますけれども、平均値で見ますと、SSで11ミリグラム/L、BODで9ミリグラム/L、CODで26ミリグラム/L、T−Nで44ミリグラム/L、T−Pで11ミリグラム/L、大腸菌群数で66個/ミリリットルです。これはもちろん脱窒素機能を入れていない施設とか、あるいは凝集を十分していない施設のデータが入っておりますし、色々な処理方式のデータが入っておりますけれども、かなり良好な水質を出していると言えるかと思います。
 それに対しまして、この表(注:表3参照)は窒素を除去する高度処理型の施設、すなわち標準脱窒素処理方式、高負荷脱窒素処理方式、それから膜分離高負荷脱窒素処理方式のそれぞれにつきまして色々なデータの平均値で示しております。最終的に活性炭処理した後の放流水で見ますと、BODが2ミリグラム/Lとか3ミリグラム/Lというレベルの濃度になっております。CODで約10ミリグラム/Lになっております。SSになりますと膜分離の場合は基本的にゼロになるはずですけれども、後の汚染があるからかもしれませんけれども、これも2ミリグラム/Lとか3ミリグラム/Lのレベルの濃度になっております。T−Nが約10ミリグラム/Lあるいはそれ以下ということです。T−Pが1ミリグラム/L以下、色度についてみれば10幾つという濃度ですので、見た目では水道水と変わらない透明な処理水が出されております。
 先ほど言いましたように標準脱窒素処理方式では、実はプロセス用水も含めまして平均で11.5倍の希釈水を工程の中で用いています。高負荷脱窒素処理方式の場合ですと2.5倍の希釈率を持っております。膜分離高負荷脱窒素処理方式になりますとこれが非常に小さくなりまして、1.43倍の平均的な希釈率となっています。
 この三つの処理方式は濃度的にはほとんど変わらないことになっておりますけれども、実際は希釈率が違いますので、負荷量として見ればかなり変わることになります。これは(注:図8参照)、膜分離高負荷脱窒素処理方式の各項目の負荷量を一とした場合に、標準脱窒素処理方式、それから高負荷脱窒素処理方式の負荷量がどうなっているかということを表しております。黒が一とした膜分離高負荷脱窒素処理方式での負荷ですけれども、希釈倍率の違いが大きく影響しまして、環境に与える影響としては大きな差が出てきていることが分かります。左から右への順に技術的な革新があったわけですけれども、その分だけ負荷を低下させていることが分かると思います。
 ちなみに維持管理費ですけれども、全部高度処理を付けていると思いますが、嫌気性消化処理方式がキロリットル当たり約1,000円であるのに対して、好気性消化処理方式が1,500円、標準脱窒素処理方式が2,300円、高負荷脱窒素処理方式が2,800円、膜分離高負荷脱窒素処理方式が2,600円位に変わる。下水のBOD200ミリグラム/LからするとBOD濃度が50倍高いわけですから、その辺を勘案していただくと下水の場合と比べることができるかと思います。

3.浄化槽汚泥への対応

 何度も申しますけれども、こういう形でし尿処理技術が10年単位で変化・向上してきたわけです。それでは問題がないかというと、色々な問題がございます。いちいち説明はしませんけれども、今日はその中で「収集物の性状の変化」ということで、浄化槽汚泥が増えてきた点と、し尿処理施設で新たな役割として期待されております対象物の拡大および処理のみならず資源化という点について触れさせていただきます。
 浄化槽汚泥の増加に対してはもちろん色々な形での対応があるのですけれども、一つとしましては浄化槽汚泥対応型のし尿処理方式の開発が挙げられます。これはご案内のように、浄化槽汚泥はある種の汚泥ですので、生のし尿とは違う性状があることによっています。
 具体的には、前処理をレベルアップしまして、前処理の段階でSS分を取り除いてやろうというものです。色々な方式があるのですけれども、この方式(注:図9参照)の場合は、SSを取るときに凝集剤を使うことで併せてリンも取ってしまおうということで、前処理の段階にそういう機能を持たせている。それで、残ったBODについて除去を行い窒素について硝化・脱窒素を行ってやろうという方式になっております。
 これもかなり高負荷でやりますので、最後の固液分離では膜分離を活用しています。最終的には活性炭でCODとか色度を取ろうということになります。
 実証試験の結果ですけれども、流入水については、浄化槽汚泥(90%)とし尿(10%)を混合した時にはBODで約4,000ミリグラム/L、窒素で700ミリグラム/L、リンで120ミリグラム/Lぐらいという水質になっております。最後の凝集沈殿した後でさらに生物処理した後の生物処理水で言いますと、BODで2ミリグラム/L、CODで22ミリグラム/L、T、Nで9ミリグラム/L、T−Pで0.1ミリグラム/Lぐらいにまで浄化されております。
 それを最終的に活性炭で処理してやりますと、BODで0.5ミリグラム/L以下、CODも0.5ミリグラム/L以下、窒素では1.1ミリグラム/Lぐらい、色度につきましては2.2度以下という処理水ができているということで、見た目は完全に水道水と同じ色合いのものが出されております。
 他の方式もいくつかございますけれども、それらの方式につきましても最終的に活性炭で処理ーをしてやりますと、BODとCODはともに5ミリグラム/L以下、SSとT−Nも5ミリグラム/Lか6ミリグラム/L、T−Pは0.1ミリグラム/Lという処理水が出るという状況です。  こういう非常に高度な技術をし尿以外の処理に苦慮している高濃度の有機性廃棄物にどういう形で適用できるかという問題もありますけれども、もう一つ、最初に申しましたし尿の持っている資源的な物をどういうふうに回収するかという課題があるかと思います。

汚泥再生処理センターと資源回収について

1.汚泥再生処理センター

 先程、厚生省の国立公衆衛生院と廃棄物研究財団での官民共同研究というお話をしましたけれども、実は今年で第5期が終わります。3年単位で15年間やってきております。その第3期目あるいは第4期目ぐらいのところで、先程言いましたように水の処理としてのし尿処理技術はほぼできてきたという認識で、それ以外のものとして、特に資源の回収をどう考えようかという問題が出され、それについて研究をやってきております。それと前後するといいますか、それをやっていた時に、実は厚生省のし尿処理の考え方につきましても新たな展開があり、さっきもお話ししましたように、国庫補助の対象からし尿処理施設がはずれて汚泥再生処理センターになりました。
 これは、何度も申しましたけれども、入口がし尿と浄化槽汚泥だったものに対しまして、生ごみとか各種ペットの糞尿とか飲食店等の残飯というものまでも入れるような形にしようということになっております(注:図10参照)。そして、液状のものについては従前の水処理で処理していく。そこで出てきます汚泥とか新たに対象とした有機性廃棄物を合わせてメタン発酵する。し尿処理の技術の最初が嫌気性消化であったとお話ししましたけれども、再び嫌気性処理を取り入れてメタンガスを回収して燃料とか発電に使おうということです。さらに、こういう所でできた汚泥や脱水したごみ、あるいは廃液を対象として、リンを回収したり炭化物を回収したり、あるいは高品質のコンポストにしようという形の機能を目指そうというふうに変わってきております。
 なお、新たに嫌気性消化を採り入れようとした 背景には、ヨーロッパとかアメリカで生ごみあるいは剪定した枝とか葉とかに対しまして嫌気性消化をしてメタンガスを回収しようという技術が開発されてきているということがありました。それには色々な方式があるようですけれども、固形物濃度が10%ぐらいのものから場合によれば20%から30%のものまであります。20%から30%といいますと、もう生ごみをそのまま嫌気性消化する技術になります。
 そういう技術が色々な所でできてきたということで、その技術を新たに導入しまして、従前の数%以下というような固形物濃度に対する嫌気性消化ではなしに、高い固形物濃度に対する嫌気性消化ということになってきております。
 平成9年度の補助から一部始まって10年度から本格化したとお話ししましたけれども、今年度になりまして四基の施設が動き始めております。ただ、生ごみをどう集めるかというのが現在課題になっているようです。
 従前のような生ごみは焼却処理するという形で流れてきたところに対しまして、片方で容器包装リサイクル法ということで紙とかペットボトルとかをごみから取り除きましょうという流れがあるわけです。その中で取り残された生ごみに対して何らかの対応をしなければいけないということですけれども、実際問題としてこれを導入されておられる自治体では、例えば生ごみの収集体制とか処理体制がまだほとんどできていない状況ですので、生ごみを集めるのに非常に苦労しておられます。現実的には、レストランとかホテルとかの事業系の生ごみを集めて対応しておられるということがありますけれども、最終的あるいは本来的には各家庭からの生ごみをどうするかが一つの課題であるわけです。
 いずれにしましても、ただ単に水を衛生処理する観点から新たな方向に移ってきたというのが現在の状況になります。これにつきましては、先程言いましたように、国庫補助事業の中での汚泥再生処理センターにつきまして、従前のような構造基準ではなくて性能基準になっていますので、これについて若干ふれます。

2.汚泥再生処理センターの性能指針

 まず水処理設備と資源化設備が必要になるということですが、水処理設備の処理能力としましては、非常に簡単な形で「計画した質及び量の水処理設備処理対象物を計画する水質に処理する能力を有すること」というだけになっております。処理水質の目標としましては、BODが10ミリグラム/L以下、CODが35ミリグラム/L以下、SSが20ミリグラム/L以下、T−Nが20ミリグラム/L以下、T−Pが1ミリグラム/L以下となっております。これは、先程言いましたような水質レベルから言うと非常に廿いというか緩やかな感じがしますけれども。国庫補助の対象としてはここまでできればいいということです。それから、安定稼動として「1年間連続運転可能であること」というのがあります。
 これだけが新しい施設の性能指針という形になっております。もちろん、それに対する確認方法がありますけれども、今日は省略させていただきます。
 資源化につきましては、「計画した資源化対象物を計画上の性状に資源化する能力を有すること」ということになっています。性能としまして、メタンガスを回収するものについてはガス中のメタン濃度が50%以上あることというふうになっています。その他の資源化というのは、まだ多くが現実的に世の中にそんなに行われていないのに行政的に一定の指針を作ろうということですので、あまり細かい規定はできない。そこで、例えば堆肥化とか炭化とか乾燥ということがあると思いますが、それらにつきましては「それぞれの計画する用途における基準等の要求される仕様を満足させる性状であること」ということで、実際それぞれの用途で要求される性状というのは利用するサイドから出てきたものを利用しようということになっております。
 前後しますけれども、汚泥再生処理センターの定義は、「し尿、浄化槽汚泥及び生ごみ等の有機性廃棄物を併せて処理するとともに、資源を回収する施設をいい、水処理設備、資源化設備及び脱臭設備等の附属設備で構成される」となっています。生ごみ等の有機性廃棄物につきましては、生ごみとコミュニティ・プラント、あるいは農業集落排水施設、あるいは下水道等から出される汚泥などの資源化可能な有機性廃棄物という形になっております。
 ただし、現実にこれだけの性能指針で施設を作るのは非常に能力を持たれた地方自治体ではできる話ですけれども、その他の自治体においては非常に難しい問題があります。現在、この性能指針をべースにしました解説書、従前の構造指針の解説書に近いようなものになるかと思いますけれども、その作成の作業が始まっておりまして、それができましたらより具体的にご理解いただけるかと思っております。

まとめ

 そういうことで、非常に駆け足でお話ししてきたのですけれども、最後に今までお話ししたことをまとめておきます。
 衛生処理という形から始まったし尿処理が、社会的環境の変化あるいは社会からの要請の変化に対処してきた。具体的には、処理水質の高度化であるとか、コンパクト化であるとか、あるいは浄化槽汚泥への対応ということになっております。 これはお話ししませんでしたけれども、課題としましては、新しい技術的なブレークスルーが必要だということで、塩類への対応とか消毒の見直しとかがあります。それから、現実的な課題として、できるだけ無人化するとか流入性状を均質化するということもあります。さらには、施設の老朽化にどう対応するかということもあると思います。
 こういう問題はし尿処理施設の問題としてあるわけですけれども、別な問題としまして、下水道とか合併処理浄化槽あるいは農業集落排水施設等の拡大の中で収集し尿等の減少があります。あるいは、処理対象物の変化がさらに起こってくるだろうということがあります。また、廃棄物の資源化が固形廃棄物の方では従前から言われておりますけれども、液状廃棄物においてもこれが資源化される必要があります。さらには、かなり高度な処理ができるような技術ができておりますけれども、そのし尿処理技術を他の所にも転用できないかという問題もあります。
 そういう中で、多様な有機性廃棄物を受け入れ、なおかつし尿や生ごみ等が持っております炭素とか窒素とかリンあるいはエネルギーという資源を積極的に回収しようという要求に対する対応として、汚泥再生処理センターがあるということになります。
 今どちらかというと衛生処理というよりもそちらの方に目が向いているようですけれども、ただ最初にやはり衛生処理ということがありますので、これはいつまでたってもキーポイントとして残していかなければいけない課題だと思っております。
 一時間ちょっとの時間でお話しするつもりで、かなり駆け足だったのですが、時間がなくなってしまいました。とりあえずざっと走りましたのでお分かりいただきにくかったと思いますけれども、終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。