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第3回し尿研究会の報告

 4月16日、東京ボランティアセンターで、東京都清掃局OBの鈴木和雄さんに、「綾瀬清掃し尿処理作業所」の話をして頂きました。綾瀬作業所は清掃局の歴史の中にもほとんどはっきり現れていないが、し尿処理の歴史にとって重要で謎の多い施設である。
 昭和8年から稼働し、いつ終わったのかはっきりとしないが、戦中か、戦後すぐまで、東京都内では後にも先にも唯一のし尿処理場であった。現在の小菅下水処理場の場所にあり、この時代にすでにし尿を希釈してではあるが、活性汚泥法で処理をしていた。
 閉鎖後ここに清掃研究所を作り、昭和30年代に初代メンバーとして鈴木さんは配属されました。当時、綾瀬作業所は、稼働しておりませんが、施設はそのまま残っており、同じ敷地内で、直営の「し尿おけ」を作る作業所があったという。
 古い写真で、鈴木さんがいた当時の綾瀬作業所の様子の解説と全容を説明し、処理内容、BODという指標がない時代の設計値からその後のBODを計算して、処理内容の再現を数値で示していただきました。

 記 石井明男




東京市綾瀬作業所概要

泌尿科学研究所  鈴木 和雄

 し尿処理施設という公共施設は日本独特のものらしく、第二次世界大戦前の欧米はもとより南方圏の半島並びに諸島にもない。特に20世紀前半1931年(昭和6年)以後から1945年(昭和20年)には日本独特の施設であった。
 本邦では昭和初期に京都十条市に「し尿処理場」があり、次いで東京市葛飾区綾瀬に昭和6年着工され昭和8年に竣工した「綾瀬作業所」稼働している。
 処理方式は、し尿を希釈して腐敗分解し、汚泥形成を促進させる。分解した成分から発生するメタンガスを捕集し、燃料に利用し汚泥乾燥を促進して肥料に再生している。

1 作業の概要

(1)ドッグの艀からポンプアップで貯留槽(レシービングタンク)へ送る。粗大しさ物は除去する。次いで、ここから、生物槽へ均一に送液する。
(2)貯留槽に浮上式の蓋( Floating Cover)で周期の散逸を防いでいる。
(3)貯留槽から生物槽に移行する際に、10倍希釈とし、細菌分解を容易にする。発生メタンは捕集し、各槽の加温用に利用する。最上部にはスカムブレーカを設け、緩く撹拌して、浮上汚泥を再沈殿させる。
(4)調整槽はControl tankとAdjust tankがあり、生物槽から流入した液は、河川水で約50 倍に希釈して沈殿池から返送される活性汚泥と混合して曝気槽へ送る。
(5)曝気槽は散気式旋回流式で、長さが35m、深さ3.5m、幅2.5mの8槽で構成し、往復流と している。
(6)沈殿槽で沈殿した汚泥の上澄み液は消毒槽へ送る。沈殿槽底に汚泥かき寄せ機(クラリファイアー)が回転しつつ、集泥する。沈殿槽の直径は10m、深さ5m。
(7)沈殿槽中心部から汚泥ピットへ送泥され、一部は返送汚泥とする。余剰汚泥は腐敗室 へ送られ腐敗させる。その後加温並びに天日乾燥させ堆肥化する。
(8)機械室には送気用の20m3/min、 58Hpのロータリーブロアを設け、受電量は225 kwである。  スクリーンしき物の濾液は一旦受槽を経て、生物槽へ送られる。
(9)ガスタンクは、メタンガスを水酸化鉄の充填した濾過器で硫化水素を除去、トラップよりガス漏れを防ぎ、気缶室の多缶式ボイラにより加温する。
(8)し尿中の粗大固形物は、サクションタンク内で自動的に除去、機械的に洗浄し、乾燥場へ移送し、一週間乾燥したのちに、市営塵芥焼却場に送る。

2 設計項目

(1)処分日量、 180kl 、搬入時間6時間
  処理時間 24時間(pH、BOD、SS等の項目は当時はない。水量負荷等もない。)
(2)希釈水の配分(総量に対する%)
 @搬入し尿に対し毎時2.42klの水×6時間=14.5klを入れる       0.8%
 A貯留槽へは毎時6.33KLの水×24時間=152klを送水する       8.0%
 G生物槽へは細菌の活性化を助長するため毎時55.9klの水×24時間=1342kl 74.0%
 C沈殿槽からの返送水、毎時12.5kl×24時間=300kl を加える     18.0%
 D曝気槽入口でさらに希釈水として、し尿量の54倍の水(180kl×54)=9720klを加える。
従ってA、B、C、Dの水量は1808.5klにDの水量が加わり、 ll,528kl約64倍の希釈量となる。

3 設計基準

 @Receiving Tank  直径8,2m×深さ3.2m=168.9m3
 ABiolisis Tank
 (し尿180 m3+希釈水14.5m3) +希釈水1,340 m3+過剰残さ300 m3=l,987m3/日
                                = 82.8m3/時
  曝気側面の壁面は62.8m
 B曝気槽の計算
  生物槽から流下する水量は 82.8kl/時
         希釈水量は 405.0kl/時
        返送汚泥量は 90.6 kl/時
           計   585.4kl/時
  滞留時間を4.5時間とし         2634 kl/時
  空気量はポジティブなブロアの容量として 87.9 kl/分
  一基あたり               29.3kl/分
 C消毒槽  流入量585.4 kl −109.6kl(過剰残さ+循環水)=475.8kl
 D排出汚泥の乾燥  毎日26が発生するとして面積を865m2とし、砂濾過深を0.2/mとする。
 F 発生メタンガス量1kg当たり7700lとしその水分を78%と見て、以上の諸元のもとで、これに対しTechinical limitedDegestion(技術的消化力限界)を65%とみなして1,030 m3/日の65%=670m3のガス量、熱量を5,400kcalとすると総層熱5,400 kcalx670m3=3,618,000kcal/日、150,750kcal/時 G汚泥は自然乾燥7日間でAq85%→75%になり、1/1.67に減量するから、Eの汚泥量26m3/日⇒15.5m3/日、これをさらにAq58%にする方法は京都十城址の実験方法に準ずる。

4 維持管理基準

 @エアレーションはステップ式かシンプレックス式とする。
 A汚泥返送率は25%とする(200%の数字が見られるが処理時間との積か?)
 G消化槽では発生ガスを速やかに抽出する。
 C活性汚泥指標SS(Suspended Solid)の観察を行う。

◎記録担当からの注解

 この時代はBOD、CODの概念が無かった。従って生物代謝への観察、即ちBOD負荷、季節変動に伴う微生物の挙動観察も、且つ最終沈殿池での硝酸性、亜硝酸性窒素並びに、炭酸ガスへの対策もない。単位は現在の「kl」、「m3」ではなく、Square Meter、Cubic Meterを使用していた。即ち、SM、CBMが使用されていた。
 感想としては当時の総能力を結集して計算を行っており、現在でも十分通じる設計計算として参考に値するものである。