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廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
 第53講:4月に出版されたODA研究書,日本型開発協力とソーシャルイノベーション(野中郁次郎著)千倉書房について その1

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一

 日本型開発協力とソーシャルイノベーション(野中郁次郎著)が4月に出版された。 この本は,7つのODAプロジェクトの仕組みを研究し,日本型開発協力におけるソーシャルイノベーションをどのように作り上げているか,行っているかを考察し,これから先もさらに重要となる日本型開発協力の方向性を示唆している。
 とりあげられた7つのODAプロジェクトは
@メガシティの廃棄物問題を解決に導いた「クリーンダッカプロジェクト」,そのほかに
A奇跡を導いたリーダシップを支えた戦略的取組「カンボジアプノンペン水道事業」,
B日本のソフトパワーとしての共感と信頼の関係「ミンダナオ平和構築」,
C日本の経験と現地のすり合わせ「ネパール震災復興事業」,
Dアフリカ売れるものをつくる農業,
Eセネガルみんなの学校プロジェクト,
F顧みられない熱帯病克服「中米シャーガス病対策」の研究である。
 本連載でも,プロジェクトの推進の中で,多くの通常では見逃されてしまいがちな知見,プロジェクト形成,実施時に将来の数十年先の社会変化までも考えてはいるが,表には出にくく,記録にも残らないであろうプロジェクトに関する思索,考察,知られていない清掃の技術,その他あらゆる社会的技術(ここでは行政も技術と考えているが)をできるだけ拾い集めてきたつもりだが,一橋大学 野中郁次郎名誉教授と研究グループが,哲学的思索を背景に,どのような考え方を選択しプロジェクトをアプローチし,実施しているかを詳細に,しかも正確に本書で記述している。
 筆者はクリーンダッカ・プロジェクトを,あれこれ考えながら進めてきた当事者ではあるが本書では,当事者も考えてはいたが技術が未熟で表現できなかったことも含めて「日本型開発協力とソーシャルイノベーション(野中郁次郎著)」から学んだ。
 今回は,どのようなきっかけ,背景で活動を構成し,進めてきたかについて記述してみたい。このきっかけを説明するとプロジェクトの構造がわかり易くなると思う。

表1クリーンダッカ・プロジェクトを実施しながら検討していた事柄









WBAの活動で区長と清掃監督員が共同で廃棄物管理事務所の建設を行った




ダッカ職員,清掃監督員,市民 NGO,有識者で清掃事業指針を議論して作成している様子



本稿の終わりに

 クリーンダッカ・プロジェクトの様々な活動が,どのような背景やきっかけで作られていったかを,体系的ではないが,書き留めていた記録をもとに,本稿では3回にわたり記述したい。  この背景やきっかけとプロジェクトがどのように形成され,進めてきたかについては記述が難しいので,想像力を働かせて読んでほしい。

※元東京都清掃局,元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーザン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括,現東洋大学大学院博士後期課程,元南スーダンジュバ市廃棄物処理事業強化プロジェクト総括