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シリーズ ヨモヤモバナシ



廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
 第49講:廃棄物収集活動を表現するモデルの構築及び同調圧力強度,選択傾向

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一

2 モデル構築での変数の整理と選択傾向の存在

2−1 第一段階
 時間を関数にするための時間の変数により状態変化を表せる発展方程式を作るための表現の工夫
 2005年,バングラデシュ国ダッカ市の廃棄物収集を改善するために廃棄物管理局の廃棄物収集関連の職員に定時定点収集の説明を行い,さらに,地域住民にもこの定時定点収集方式の説明を開始した。職員側も住民側も定時定点収集を全く知らない状態から始め,プロジェクトチームが職員にも住民にも,繰り返し説明した。
 クリーンダッカプロジェクトで取り組んだ実際の例では,ダッカでは,説明だけではなく,収集車(コンパクタ一車)を利用した定時定点収集活動の試みが,さらに安定した導入を促進したが,このコンパクターの導入という活動が,同調圧力強化の活動として効果的に働き,同調圧力に応じる傾向(選択傾向)が大きくなる。整理すると図1のようになる。


ごみ処理プロジェクトに対する市民の状態を2状態で表現するモデル
 状態1:プロジェクトに積極的な市民
 状態2:プロジェクトに消極的な市民



図1確率変数で表す2状態モデル

2−2 第2段階
状態変化を確率微分方程式で表す状態の表現の工夫
 導入について説明を開始した直後は,職員も住民も導入について積極派は少数で,消極派が大多数の状態に分かれていた。プロジェクトチームは,職員,住民に理解を深めてもらうために説明を繰り返し,パイロットプロジェクト実験の様子を見せたところ,職員も住民も積極的導入派が次第に増加し,消極派が減少していった。
 言葉を変えると,積極派を増やす同調圧力強化をすることにより消極派が受けいれて状態が変化していったことになる。さらに,積極派,消極派の両グループが意見交換し,時間とともに,積極派と消極派の人数が一定の割合で安定していく。

 このような社会活動モデルを図1のようなモデルとして想定した。確率統計力学モデルに当たると考える。
 あるいは消極派から積極派に遷移する確率が考えられる。

廃棄物収集を無計画で行っている状態。定時定点収集が行われる前の収集状態



廃棄物収集改善について,積極派と消極派の協議を繰り返す廃棄物管理事務所での協議の様子



住宅地から一次収集業者が収集し,積み替え収集点でコンパクターに積み替える定時定点収集実施の様子@



住宅地から一次収集業者が収集して,積み替え収集点でコンパクターに積み替える定時定点収集実施の様子 A



定時定点収集を導入するときに区長住民と話し合った。積極導入派と消極派が話し合っている様子。



定時定点収集実施の前の従来の収集用のコンテナが12個設置の様子。定時定点収集の実施により12個のコンテナをすべて撤去した。道路が広く使え,収集時間以外はごみが無くなり衛生的にになった



3 本稿の終わりに

 社会状態を数理工学的に解析するためには,簡単な線形システムにはならない。かといって,従来位の手法で非線形システムのアプローチに安易にモデル化しても意味がない。そこで視点を変えたモデルに取り組んでみた。
 第46講でモデルの検討をしたが,本稿では適正なモデルの例を示した。また,このモデルでの変数としては,同調圧力強度,同調圧力強度に応じた選択傾向が存在する。積極派から消極派に遷移する確率,あるいは消極派から積極派に遷移する遷移確率,が考えられる。

 興味のある方はご連絡をお願いします。

参考文献
1 石井明男 第33講 廃棄物プロジェクトの特性についての対応 その2 職員啓発内容と効果,評価 都市と廃棄物 Vo152,No.5 2022
2 石井明男 第34講 廃棄物プロジェクトの特性についての対応 その3 住民啓発内容と効果,評価 都市と廃棄物 Vol,52,No.7 2022
3 Hermman Harkrn,Synergesitics-AnIntroduction,Nonequilibrium Phase Transition and Self-organization in Physics,Chemistry and Biology 1978 2nd ed.Springer-Verlag Berlng Heidelber


※元東京都清掃局,元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーザン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括,現東洋大学大学院博士後期課程,元南スーダンジュバ市廃棄物処理事業強化プロジェクト総括