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廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
 第35講:廃棄物プロジェクトの特性についての対応その3 住民啓発内容と評価

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一

 第32講では,プロジェクト実施時,廃棄物プロジェクト(システム)が持つ独特の特性に対して,その対応について報告した。収集改善をするために,操作可能なパラメーターである@職員啓発活動内容とA住民啓発活動内容を操作して状況を変えていくことも説明した。今回は,出力である収集改善を周囲の状況の変化に,住民啓発活動をどのように変化させていくことが適切かについても考察したい。
 住民啓発,住民広報を考えるときに啓発の対象規模を考える必要がある。
 @国レベルで実施する場合
 A国レベルより小さな規模の地域で啓発をおこなう場合
 Bさらに小さな区(市町村)レベルの場合
 Cコミュニティレベルの場合
 といった地域住民の理解を得る場合,自ずと実施目的を鑑みて実施方法,実施内容が異なる。今回の住民啓発は,区レベルの規模の住民啓発ということになる。

83 住民啓発の実施と分析について

 本稿では,2005年から2013年にバングラデシュ国ダッカ市役所廃棄物管理局で実施してきた廃棄物改善活動のひとつ,収集改善のための住民啓発をどう実施して,どのような役割を果たしたかについてまとめてみたい。
 ダッカ市では「コンパクターを使っての70gの容器を用いた定時定点収集」を導入しての収集改善に取り組んだ。
 実施した住民啓発活動の全体像と活動内容をできるだけ具体的に表1にまとめた。
 表1では
(1)活動の実態については,
 @啓発活動の期間/1回活動の実施時間/実施頻度
 A啓発の内容,効果が出る時期
 B啓発の規模/職員啓発の対象を記述した。
(2)啓発活動で職員がどのような啓発をされたか,また,住民自身がどのように評価しているかについての5段階評価分析をした結果も記述した。啓発の評価の項目についてループリック法を利用し,
 @関心度・取り組み姿勢・意欲
 A思考形態の育成・判断力育成
 B導入・獲得・実施した技術
 C知識育成・理解度育成
  としている。評価結果は2021年現地ダッカ市役所での清掃監督員5人と任意に選んだ10人の住民からのヒアリング調査結果である。  (評価は 5:非常に高い,4:高い,3:普通,2:あまり高くない,1:影響なし)
 基準は別途示す。
(3)住民啓発の効果についても,2021年現地ダッカ市役所での清掃監督員5人,活動に参加した10人の住民からのヒアリング調査結果による。
(4)住民啓発の活動が職員啓発活動への影響与えるがその効果についても記述した。
(5)収集改善への貢献度,システムの成功への貢献度を示している。

表1職員啓発の効果と分析結果(2005年から2013年の実績による)




CAPのラリー実施
清掃事業実施細目を住民に説明する様子
キックオフ会議
住民会議
コミュニティセンターの中の清掃事務所
清掃事業指針策定の会議

終わりに

 職員啓発も住民啓発も学校で行うような授業形式(レクチャー型)啓発方法ではなく,体験型の啓発をおこなった。啓発活動の評価を見るとこの体験型の啓発の効果が高いことが分かる。また,住民啓発の体験型啓発で身に着けた活動の経験は,職員啓発活動へ影響与え,効果も高く,収集改善への貢献度,システムの成功への貢献度も高いことが分かる。
 ワードにWBAに選定され,リーダーとなる住民が自覚してCUWG 1)が主体的に,この活動の順番で実施していくことが重要である。
 CUWGを組織することで,また自主的に活動することで,周囲の住民がCUWGを認めるようになった。その結果,住民が作る清掃事業を支援,協力する活動計画書(CAP)が区長,市役所,周囲の住民活動が進められた
。  次第に住民と市役所の信頼関係ができて,清掃事業の事業指針で清掃事業の政策について議論し,合意形成ができるようになっていった。この住民と市役所の信頼関係を築くのにWBAlの清掃事務所を中心とした活動が果たした役割,WBA3の果たした役割は大きい。
 住民啓発の最終的な目標は,住民の考えや意見を知ることにある。

参考文献
1 バングラデシュ国ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト プロジェクト完了報告書 2012JICA(国際協力事業団)ダッカ
2 バングラデシュ国ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト プロジェクト完了報告書(延長)2013JICA(国際協力事業団)
3 石井明男,眞田明子 クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録(JICA プロジェクトヒストリィ)佐伯コミュニケーションズ 2017
4 Walter Lippman“Public Opinion”1922(邦訳 世論上,下,掛川トミ子翻訳1987 岩波書店)
5 岡本純子,石井明男,久保田尚子,ハスナシト他, 居住地単位のコミュニティという概念がほとんどないダッカ市での住民参加型廃棄物管理の導入について 廃棄物資源循環学会研究発表会平成23年


i 2021年現地ダッカ市役所での清掃藍督員5名,住民5名へのヒアリング調査を実施した結果による
2021年現地ダッカ市役所での清掃藍督員5名,住民10名へのヒアリング調査を実施した結果による
1)CUWG:コミュニティユニットワーキンググループ(参考文献5)



※元東京都清掃局.元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーダン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括.元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括,現東洋大学大学院博士後期課程,元南スーダンジュパ市廃棄物処理事業強化プロジェクト総括