読み物シリーズ
シリーズ ヨモヤモバナシ
廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
第34講:途上国で廃棄物セクターを支えたインフォーマルセクターの活動例
講話者:石井明男*
コーディネーター 地田 修一
廃棄物事業は,公共サービスを実施する主体は自治体ではあるが,公共サービスを円滑に実施するためには企業の技術的支援,住民の理解に基づく協力,コンサルタント支援,多くの廃棄物関係の団体に支えられている。特に技術的には,多くの民間会社や研究機関が果たす役割が大きい。事業を推進するためには,例えば住民が組織する地区の清掃協力会,集団回収を行う地元の自治会,リサイクル団体なども重要である。
今回は,筆者が関わった廃棄物改善プロジェクトを通して体験,見開きした廃棄物セクターを支えたインフォーマルセクターの活動例を説明したい。今後の廃棄物セクターの発展のために廃棄物セクターを支える組織をインフォーマルセクターをひろくとらえ,まとめてみたい。
84 途上国で廃棄物処理を支えるインフォーマルセクター
2003年から2020年までにかかわった,バングラデシュ国ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト,2010年からのスーダン共和国JICA環境管理門家の活動時,スーダン共和国 ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト,パレスチナ国廃棄物管理能力向上プロジェクト・廃棄物管理改善プロジェクト,南スーダン共和国ジュバ廃棄管理能力強化プロジェクト実施時に活動をした,廃棄物セクターを支えたインフォーマルセクターの活動の例を報告したい。インフォーマルセクターの活動例としては,NGOの活動,コンサルタントの活動,民間の研究機開,試験機開,大学研究機関,民間企業の活動などがあるが表1にまとめた。
表1 廃棄物セクターを支えたインフォーマルセクターの活動例
河川清掃の様子
埋立地のウエイストピッカー
一次収集の様子 1
ダストビンを花壇に
NGOが企画した廃棄物減量キャンペーン実施
一次収集で使うリキシャバン
コンポスト製造施設の様子
分別収集実験の様子
終わりに
大型機材もいらないので,コンポスト製造活動はNGOが取り組みやすい活動である。また,成功しているか失敗したかについての評価もあいまいであり,フェードアウトしているケースも多い。コンポストの製造活動は一部の例外を除けば,持続可能な活動にはなりにくい。小さなNGOがダストビンを花壇に変える活動や,NGOが自作の石けんを作って住民に配布する活動があったが,地元住民からは喜ばれていた。バングラデシュやベトナムではし尿からメタンガスを発生させて,家庭用の燃料にする活動,発生するガスで食べ物を焼いて売っている活動があった。バングラデシュでは一次収集の会社を設立し,一次収集人を雇用していたが,次第に活動が拡大して,100人くらい雇用する会社になっていた。埋立地で,ウエイストピッカーの子弟の教育をしていたNGOがあった。JOCVやNGOがダッカ市役所,民間企業,他のNGOなどをコーディネートをして,河川清掃の大型活動を実施し,成功していた。途上国ではNGOが廃棄物改善に果たしていた役割は小規模ながら多かった。
廃棄物処理計画を策定するために,ごみ量ごみ質調査,住民意識調査,浸出水の性状調査,ごみカロリー測定,新しいシステム,例えば合併処理浄化槽の試験運転などが必要になり,良いコンサルタントや研究機問を探すが,途上国では見つからない。多くの途上国ではコンサルタント研究機関の能力は未成熟で育成が必要になった。
廃棄物事業を進めるために有能なコンサルタント,研究機関が必要であるので,プロジェクトを行いながら,コンサルタントの育成,研究機関の育成を行ってきた。今後も廃棄物事業を進めるうえで,行政体を中心として,コンサルタント,研究機関の支援が必要である。
また,有能なコンサルタントや研究者を育成するためにも大学の研究組織を育成し,人材を育てる必要がある。
途上国で廃棄物処理の分野では徐々に,高度な技術が必要になって来る。例えば,焼却炉を導入するにしても,仕様書が読めないと焼却炉の能力評価ができない。導入する国では,役所の中にも優秀な技術者が必要であるし,しっかりとした技術者がいる企業の力も必要になってくる時期が来る。また,その国の技術力の底上げをするために,高い技術を持った企業の力が重要で必要になってくる時期も来るため,計画的に育てることを考える必要がある。
また,筆者の関わったどの廃棄物プロジェクトの方針,マスタープランでも民間リサイクル事業には関与せずに,廃棄物処理との共存していた。ダッカでは,ウエイストピッカーが集めた有価物を買い取る業者が生まれ,買い取った有価物を再生する小さな家内工場ができていた。次第にダッカ市の南部に有価物を再生する工場が集まりリサイクルの地域ができていった。どのように輸入したかはわからないが,日本からプラスチックの整形用の中古の機械も輸入してリサイクルの工場を運営していた。
参考文献
1 バングラデシュ国ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト プロジェクト完了報告書
2012JICA(国際協力事業団)ダッカ
2 バングラデシュ国ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト プロジェクト完了報告書(延長)2013JICA(国際協力事業団)
3 スーダン共和国JICA環境管理門家報告書 2013JICA(国際協力事業団)
4 スーダン共和国 ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト プロジェクト完了報告書 2017JICA(国際協力事業団)
5 パレスチナ国 ジェリコ及びヨルダン渓谷における廃棄物管理能力向上プロジェクト廃棄物管路総括改善報告書 2010JICA(国際協力事業団)
6 パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクト(フェーズ2)プロジェクト完了報告書 2018
JICA(国際協力事業団)
7 南スーダン共和国ジュバ廃棄管理能力強化プロジェクト プロジェクト完了報告書 2014 JICA(国際協力事業団)
8 南スーダン共和国ジュバ廃棄管理情報収集・確認調査 2018JICA(国際協力事業団)
9 石井明男,眞田明子 クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録(JICA プロジェクトヒストリイ)佐伯印刷 2017
10 インドネシア国JICA専門家報告書(廃棄物政策及び廃棄物事業)1995JICA(国際協力事
業団)
※元東京都清掃局.元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーダン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括.元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括,現東洋大学大学院博士後期課程,元南スーダンジュパ市廃棄物処理事業強化プロジェクト総括