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廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
 第32講:廃棄物プロジェクトの特性についての対応

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一

 前回,廃棄物プロジェクト(システム)が持つ特徴的な特性を考えてみた。
 プロジェクトを実施するときに,この特性に対して,どのように対応してきたかについて報告したい。

81持続可能なプロジェクトとは何か

 プロジェクトの活動ライフサイクルのイメージを図1に示す。図で,横軸が時間,縦軸がプロジェクトの成果とすると,通常はプロジェクトの介入に従って,次第に成果が上がっていく。介入が終了(プロジェクトが終了)して,現地の自助努力等でさらに活動が発展し,さらに成果が上がり,そして定着していく。
 このような活動が持続可能なプロジェクトであるとする。

82 どのようにして持続可能なプロジェクトになるのか

 プロジェクトを実施してみてわかるのだが,プロジェクト側(行政側)で,できることは非常に限られている。廃棄物処理事業では活動を推進して定着させるには,住民や職員の理解と協力が必要であるので,協力関係をどのような仕組みで築くかについての研究は必要である。
 行政サービスは,市民生活の質の向上にために実施していくので,まず,職員の理解と協力と住民との協力関係を作っていくことが重要である。
 第一度階として,ここでは住民に行政情報をどのように正確に伝え,住民に理解してもらうか,その適切な方法を作り出す必要がある。職員の理解,協力も必要である。

図1 プロジェクトのライフサイクル



図2 モデル化

 次に,住民の持っている意見をどのように行政側が知るかということである。またどのように職員の意見を行政の中枢が認識するかである。  最後に,どのような形で行政側は住民と合意形成(あるいは理解)をとるかも重要である。セミナーや説明会という形式では不十分で,住民啓発と合意形成の仕組みが必要である。
 そのために「ダッカで構築した仕組みが,本稿でも何度か記述をした「WBA(ワードベースとアプローチ)」である。
 その仕組みを図2のモデルで説明したい。
 収集システムを作り上げて改善することを例に挙げる。
 プロジェクト側は,住民啓発活動と職員啓発活動を行うことにする。モデルではこの職員啓発と住民啓発を入力とする。モデルでは出力である収集率を向上させようとして,入力を変化させても思い通り出力が向上するとは限らない場合が多々あるし,成果が出る場合もある。活動を表1のように分類し検討して見ると,

表1 入力の住民啓発活動と職員啓発活動と出力の収集率の向上の関係

 @ 出力である収集率を上げようと,入力である住民啓発活動を強化して,成果が出る場合と出ない場合がある。
 A 出力である収集率を上げようと,入力である職員啓発活動を強化して,成果が出る場合と出ない場合がある。
 B 出力である収集率を上げようと,入力である住民啓発活動と職員啓発活動を同時に強化して,成果が出る場合と出ない場合がある。
 この@,A,Bの活動をまとめたものが表1である。

終わりに

 収集システムの構築をしていくうえで,ケース5は住民啓発活動,職員啓発活動を強化していき,出力が向上する場合である。観察すると住民啓発活動,職員啓発活動が相互作用で活動が発展して成功する活動である。
 しかし,システム工学上活動が非線形系活動になり解析が難しいが現地で活動を観察すると入力の両方の活動が相互作用を起こし活動が想像以上に大きく発展することが多いので,実験を重ねて,WBAの結び付けた経緯がある。持続可能化活動の要素がここにある。

i非線形系:入力と出力が比例関係でなく因果関係が分かりにくい系のこと
線形系:入力と出力が比例関係という因果関係を持つ系では,どのような職員啓発の活動が,職員の琴線に触れて出力に効果をあげていったかについては次回の課題としたい。



※元東京都清掃局.元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーダン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括.元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括,現東洋大学大学院博士後期課程,元南スーダンジュパ市廃棄物処理事業強化プロジェクト総括