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廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
第29講 プロジェクトは現地にどのように根付いていったか その5 南スーダン国ジュバ市の廃棄物処理事業の立ち上げ その2

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一

 清掃の組織もなく,収集機材もなく,予算もなく,人材もなかったところから始まった清掃事業を立ち上げたプロジェクトの事例と教訓

 2012年に始まった南スーダン国ジュバ市の廃棄物処理強化の支援は収集機材もなく,予算もなく,清掃の組織もなく,人材もなかったところから始めた。第28講で紹介したが,900商店がある巨大マーケットのジェベルマーケット,400店舗がある.ジュバマーケットのごみ収集は,プロジェクト開始後4か月目には開始できた。住宅地の収集については6か月後に組織を整備して収集を開始している。ごみの収集を見たこともやったこともない市民や関係者に収集の実際を目で触れることで重要性を感じてもらい,組織や予算を作り,最終的の市民から料金を徴収していけたらと,独立採算で活動ができる組織の設立の方針を決めた。
 ごみ収集の管理運営は埋立地の建設,運用,人材育成のためのジュバ廃棄物管理グループ設立,訓練,活動も急いで活動開始した。
 本稿では,これらのマーケットのごみ収集,住宅地のごみ収集,そして埋立地の建設と運用,人材育成のために組織した,ジュバ廃棄物管理グループ設立と活動,それらを支えた活動について紹介する。思惑通りにいった活動もあったが,活動が難しくなったこともあるのでその難しくなった理由についても報告する。
 後述するが,難しくなった最大の理由は,組織を作ること,公共サービスを行うことなどに取り組んだ順番がジュバの状況には合っていなかったことによる。清掃事業は民主的な地方自治ができていることが前提であるのだが,ジュバには十分な土台ができていなかった。

76.マーケットのごみ収集,住宅地のごみ収集,埋立地の運用,ジュバ廃棄物管理グループの活動を支えた活動 その1

 マーケットのごみ収集,住宅地のごみ収集,そして埋立地の建設と運用,人材育成のために組織した,「ジュバ廃棄物管理グループ」を設立し,活動を支えた活動である住民啓発,行政広報,人材育成,第3国研修,本邦研修,市役所の中に清掃局を設立,修理工場の設立,マーケットの料金徴収,住宅地の料金徴収,リサイクルの導入,予算制度の導入,ジュバ大学の講座設立指導,その他の活動を行ったので今回の第29講及び次回の第30講で紹介する。また,各活動間の関係について,活動との連携と効果・結果についても以下に示す。

本稿の終わりに

 ジュバ市で清掃事業を担う組織はプロジェクトが入る前は存在しなかった。そこで清掃事業を担う組織の設立は急務だったが,なかなか決まらなかった。最大の理由は,清掃事業を運営する人材が不足していたことである。
 インドネシアで専門家をしていた時(1992年から1995年)に清掃事業を担っている組織の改革をしなければならず調べたが,中小都市で特別の清掃専門の組織を持っているところは多くなかった。税金課とか都市施設を管理する公園課等が実施していた。
 フィリピンで調査したときにも,中小都市は専門の清掃管理組織を持っているところは少なかった。また,パレスチナでは清掃組合が適していた。
 2012年当時南スーダンは独立直後で,ジュバにはジュバ市役所の設立はまだだった。中国の支援でジュバ市役所庁舎の建設が行われ,市役所は暫定的な組織を考えていた時期である。南スーダンは独立前,現場の行政はパヤム(区)が行っていたので市役所は不要であった。
 そのような中で,150万人の人口をようするジュバ市の清掃事業の運営を,ジュバ市に任せてよいものか迷った。
 実施能力からジュバ市役所に環境衛生局を設立することが良いということになった。では局長をどうするかが問題になったが,結局,軍から派遣された。
 当時,ジュバで行った廃棄物事業改善活動が新聞で報道されたので掲載する。当時のジュバ市の意気込みが感じられる。

ジュバの廃棄物処理を報じた現地の新聞記事

参考文献(さらに理解を深めるために参考にできる資料,文献)
1.石井明男,眞田明子 クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録(JICA プロジェクトヒストリイ)佐伯印刷 2017
2.大宮直明(製作,監督)アブバとヤーバ,スーダン(南スーダン)と日本で暮らす人々の記録映画 2011年のレファレンダム
3.Steven Johnson,Emergence The Connected Lives of Ants,Brains,Cities,and Software.Scriber,imprint of Simon & Schuster,Inc.2001
4.石井明男 南スーダンで行われた廃棄物事業 平成27年7月号 生活と環境
5.横山源之助 日本の下層社会 1949 岩波文庫
6.紀田順一郎 東京の下層社会 1990 新潮社
7.石井,小谷 廃棄物プロジェクトをとおして見えてきた希望 2018,7 生活と環境
8.石井,小谷 トイレヨモヤモバナシ 第5講 ワードペーストアプローチで行った収集改善 Vol.49,No.2 2019 都市と廃棄物
9.石井明男(廃棄物資源循環学会企画セミナー講師)スーダン国ハルツームにおける廃棄物管理事業における経験と実施手法 廃棄物資源循環分野における国際協力の近年の動向



※元東京都清掃局.元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーダン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括.元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括,現東洋大学大学院博士後期課程,元南スーダンジュパ市廃棄物処理事業強化プロジェクト総括