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シリーズ ヨモヤモバナシ



廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
 第27講:プロジェクトは現地にどのように根付いていったかその5 パレスチナで清掃組会を組織した事例と教訓その3

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一

74.パレスチナで,6ヶ所のA,B,C,D,E,F清掃組合を自己組織化(第25講参照)で作り上げていった活動の紹介と活動が進展していった様子

(1)自己組織化を引き起こす4つの要因
 第25講で紹介したように,複数の活動を組みあわせて活動が相互作用を引き起こし,活動が発展していく構造とし,その力を使って清掃組織を設立した。活動の組み合わせ方を以下に紹介する。4つの活動の要素は@啓発活動を中心とした活動,A相互作用を引き起こし,自己組織化を誘導する活動,B政府と市民が自由に意見交換できるような民主的な活動ができるプロジェクトの実施環境を作る活動,C組合を作るための推進力となる活動である。

表2 自己組織化を引き起こす4つの要因を組み立て

(2)清掃組合の設立と進展の状況
 清掃組合設立,立て直しをしたが経緯を示す。パレスチナでは複数の都市をまたいで清掃組合を設立するという活動は行政組織の改革という観点からも,また地方行政の改革という観点からも大改革である。活動の変化を見てみるとこの大改革の様子を見て取れる。教訓が多いと思う。

表3 清掃組合の設立と進展の状況
 
関連写真
市民参加のバスツアー

町で行われた住民集会の様子

ごみ収集の様子

A組合設立関係者

学校で行われた環境教育の様子

A清掃組合のエグゼクティブダイレクター

B市の市街地の様子

政府,組合との調整会議の様子

イスラム宮殿の遺跡

A清掃組合事務所(一階)

議会の様子

パレスチナへの日本の支援内容の合意

 収集の様子

市民への活動報告会

(3)料金体系について
 料金体系については大きく分けると2種類に分類できる。

表4 料金体系



表5 組合の規模と組織について

本稿の終わりに

 2006年当時,廃棄物事業に関する地域の関心は低かった。多くの住民説明会や住民会議を実施して,次第に地域の廃棄物処理に対する考え方や接し方が変わり,雰囲気が変わっていった。世論や地域の雰囲気が変わっていくと政府も,組合の設立担当者の考え方も変わっていった。
 しかし,料金徴収の段階に入ると,世論は再び反転したが,収集サービスの重要性と収集や埋め立て処分には費用が掛かるということを広く住民に理解してもらい,料金の徴収が必要だということになった。
 実際に2−3か月,料金は徴収せずに収集を行った結果,住民はサービスに満足し,料金は集まるようになっていった。行政サービスという考え方ができていったように思える。
 ばらばらだったパレスチナの遊牧民の集まりが,共同で清掃事業を実施する清掃組合を設立し,運営することで,地方自治が実現できていったように思う。


参考文献(清掃組合を設立するためにさらに理解を深めるために参考にできる文献)
1.石井明男,眞田明子 クリーンダッカ・プロジェクト ゴミ問題への取り組みがもたらした社会変容の記録(JICA プロジェクトヒストリイ)佐伯印刷 2017
2.P.Glandorff,I.Prigojin thermo−dynamic theory of structure,stability and fluctuations Wily Inter−science London 1971
3.佐々木信夫 自治体をどう変えるか 筑摩書房 2006
4.佐々木信夫 市町村合併 筑摩書房 2002
5.東京都 広域行政論の変遷に関する調査 東京都 1991
6.吉村弘 最適都市規模と市町村合併 東洋経済新報社 1999
7.石井,小谷 都市と廃棄物 トイレヨモヤモバナシ 第11講 廃棄物行政と行政の民主化 Vol.50,No.6 2020
8.Steven Johnson,Emergence The Connected Lives of Ants,Brains,Cities,and Software. Scriber,imprint of Simon & Schuster,Inc. 2001
9.石井,小谷 都市と廃棄物 トイレヨモヤモバナシ 第5講 ワードベーストアプローチで行った収集改善 Vol.49,No.2 2019
10.石井明男(廃棄物資源循環学会企画セミナー講師)スーダン国ハルツームにおける廃棄物管理事業における経験と実施手法 廃棄物資源循環分野における国際協力の近年の動向 2021,4
11.石井明男 廃棄物処理プロジェクトにおける創発がプロジェクトの自己組織化に及ぼす影響に関する研究 −介入によるエントロピー減少の仮説設定と検証− 第32回廃棄物資源循環学会研究発表会 2021.10



※元東京都清掃局,元ダッカ廉棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーダン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括.元パレスチナ廃棄物管理能力強化プロジェクトフェーズU総括.現東洋大学大学院博士後期課程