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廃棄物分野の海外技術協力である「クリーンダッカ・プロジェクト」に携わって
第18講:廃棄物行政の方向性を決めていくパイロットプロジェクトその2

講話者:石井明男*

コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)

 前回のスーダン国ハルツーム州廃棄物改善プロジェクトでは,パイロットプロジェクトを利用して定時定点収集の定着の可能性を探り,拡大した経験の紹介をした。
 今回は,バングラデシュ国ダッカ市で第1ステップとして,パイロットプロジェクトを実施し,得られた結果をもとに,第2ステップとして,地域社会に適合した収集システムを作り上げた経験を紹介する。

59 パイロットプロジェクトで基礎的な情報の収集を行う

 2008年当時,ダッカ市でのごみ収集は,収集時間が不定期で決まった収集形態も持ってなかった。
 そこでダッカ市の収集形態を作るために,
@ 第1ステップとして,定時定点収集の導入可能性を調査するために2か月間,3か所でパイロットプロジェクトを実施した。
A 第2ステップとして,第1ステップの結果をもとにWBAの仕組みを使って地域にあった収集方法を導き出していった。
 第1ステップで実施した3か所のパイロットプロジェクトは,スーダンで実施したプロセスと同様であるので詳細は割愛する。実施内容は以下の表に示す。また写真も参考にしてほしい。

プラスチック容器を使用した定時定点収集1
プラスチック容器を使用しての定時定点収集2
プラスチック容器を使用しての定時定点収集3
リキシャアバンからごみを出して有価物回収
リキシャバンがプラスチック容器を使用しての定時定点収集
リキシャバンからコンテナに積み替えている様子
リキシャバンからコンパクターへの積み替え1
リキシャバンからコンパクターへの積み替え2
リキシャバンからのごみを積み替えやすくした小型のコンテナの開発1
リキシャバンからのごみを積み替えやすくした小型のコンテナの開発2
戸別に定時定点収集の説明1
戸別に定時定点収集の説明2
紙袋を使用しての定時定点収集(ダストビンを収集点にした)1
紙袋を使用しての定時定点収集(ダストビンを収集点に使用)2
紙袋を使用しての定時定点収集3
紙袋を使用しての定時定点収集実験4
紙袋を使用しての定時定点収集実験5
収集の拠点としたワード清掃事務所
住民へのコンパクターの説明会
住民へのプラスチック容器を使用しての定時定点収集の説明

実施に当たっては,
@ ワード(区)の区長,住民に定時定点収集を説明する。
  ダッカでは一次収集者への説明も加えた。
A 当時,ダッカ市にはコンパクターがなかったので,平ボディのトラックを供出してもらい収集車とした。
B(1)ごみ排出は70gのプラスチック容器,
 (2)紙袋,
 (3)各自用意したプラスチック容器を使用した。
C 住民の受け入れの意向,住民の協力度合い,定着にかかる期間を確認した。
  結果は,
 ・定着には1か月ほどかかった。3)
 ・各ワードに市役所,住民と協議して各地域で収集の形態を形作っていくことができた。
 ・定時定点収集は受け入れられた。
 ・ごみの排出は,プラスチック容器が適していた。
 ・地域住民は互いに協力して継続した。

60 地域の文化慣習や地域特性にあった収集システムの形成 4)

 第1ステップで得られた結果を利用して,ワード清掃事務所長を中心に,区長,住民,一次収集人と何度となく調整会議を行い,各ワードの地域特性にあった収集システムを形成していった。WBAを使って収集システム形成の指導を行った。その内容を以下に示す。また写真を参考にしてほしい。

まとめ
 パイロットプロジェクトで得られた情報を基礎に,WBAを使いながら現地の収集改善を行い,定着していった。この活動により,
@ WBAはダッカ市でも認められ,「ダッカの正式な清掃業務」として位置づけられ,条例化された。
A ワード清掃事務所長(清掃監督員)は,住民と合意形成を行いながら,業務を遂行する能力を身に付けていった。
B 今回実施した収集改善は,ダッカ市のように多様な慣習を備えた地域が存在する都市での収集システムの開発には適していた。
C コンテナは交通渋滞を引き起こすという理由で,ダッカ市ではコンテナの使用時間を「午後6時から翌朝6時まで(夜間のみ)」に制限されたが,この規制に各ワード独自の対応をすることで切り抜け,安定した収集を継続していった。
D 2006年当時収集率が40%程度だったが,その後,各ワードごとに作られた収集システムが定着し発展して2017年には80%まで向上していった。

従来型のダストビンからの収集1
従来型のダストビンからの収集2
大量排出のための大型ビンを使用しての定時定点収集
定時定点収集の住民説明会
定時定点集の場所,時間を示したサインボード設置
平ボディトラックを利用しての定時定点収集1
平ボディトラックを利用しての定時定点収集2

  (次号に続く)

参考文献
1,JICA バングラデシュ国南北ダッカ市廃棄物能力強化プロジェクト 2013
2,石井明男,眞田明子 クリーンダッカ・プロジェクト(JICAプロジェクトヒストリイ)佐伯印刷 2017
3,石井明男他 ダッカ市を構成する行政区単位で改善するダッカ市の廃棄物処理改善 第19回廃棄物資源循環学会研究発表会 2008
4,石井明男他 地域住民の慣習,民間収集業者の業務と協調しながらのダッカ市の廃棄物処理改善の取り組みについて  第22回廃棄物資源循環学会研究発表会 2011


※元東京都清掃局,元ダッカ廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,元スーダン国ハルツーム州廃棄物管理能力強化プロジェクト総括,現東洋大学大学院博士後期課程