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世界の列車トイレ −ロシア・モスクワ−

講話者:清水 洽*

コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)

 今回はイタリア・ボローニヤ在住の娘清水みのりからの情報です。フィギュアスケートGPモスクワ大会を見に行くためにモスクワを訪問したそうです。
 ご存じのようにロシアは極東アジアからヨーロッパまでまたがる世界最大の面積を有する共和国で,専制君主ピョートル大帝,エカテリーナ女帝時代に東進を重ね,ロシア革命後,ソビエト連邦を結成しましたが,20世紀末における民主化の波に呑まれて解体分裂し,現在に至っています。
 鉄道は1837年に当時の首都サンクトペテルブルクと皇帝の居所があるツァールスコエ・セロ一間で開通し,軌道6フィート(1,829mm)が使用されました。1851年にサントペテルブルク−モスクワ間644kmが開通しましたが,この路線は5フィート(1,524mm)です。
1917年にソビエト連邦が誕生しますが,その後も路線は拡大し続け,1980年には14万8,000kmに達しました。

写真1 モスクワ赤の広場 2018.11.18

 一方,サハリンの鉄道は日本の統治時代に建設されたもので,この区間の軌道は1,067mmとなっており,戦後も日本からSL,DC,PCを輸入しています。
 ロシア鉄道の旅客輸送は赤字ですが,これを貨物輸送で補っているのが現状です。それでもロシアでは鉄道が一番重要な交通機関で,ロシア鉄道株式会社(RZD)はパイプラインを除く全貨物輸送(トンキロ)の4分の3以上,旅客輸送(人キロ)のほぼ半分を輸送しています。輸送延長は,アメリカに次いで世界2位,電化延長は世界1位です。また貨物輸送(トンキロ)ではアメリカ中国に次いで世界3位,旅客輸送(人キロ)では,中国,インド,日本に次いで世界4位です。世界最長距離を走るシベリア鉄道は世界最長距離(モスクワ−ウラジオストク9,288km)を,優等列車「ロシア号」で毎日1本,7泊8日かけて運行されています。

写真2 ワリシイ大聖堂 2018.11.18

写真3 モスクワ・ベラルースキー駅前広場 2018.11.19

 モスクワはイタリアと違って,落書きの全くない清潔な街ですが,警備が厳しく,駅構内およびプラットホームの彼方此方で武装した国家警察が見張っており,カメラを構えることが出来ず,スマホで撮影したそうです。
 市内から空港まではアエロエクスプレスで約30分ですが,各車両にはトイレがなく,車内はかなり混雑をしていたため,娘は空港で車両を下り,トイレのある車両に乗り込んで撮影をしたそうです。警備が厳しく,非常に苦労したそうです。


写真4 アエロエクスプレス急行 2018.11.19


写真5 アエロエクスプレスの真空式トイレ 2018.11.19


写真6 モスクワ・ベラルースキー駅での通勤電車 2018.11.16

写真7 モスクワの地下鉄のホーム 2018.11.16

 地下鉄の駅は壁も天井も床も全て大理石張りの賛沢な造りで,落書きもなく,非常に綺麗です。モスクワ行きに際して,テロを心配していましたが,警備が非常に厳しく安全だったそうです。

 現在は在来線の路線による運航ですが,高速新線の計画はモスクワからニジニノブゴロドを経てカザンに至る約770kmで,設計速度は400km/hでモスクワ−カザン間を3時間30分で結ぶ予定です。


参考文献

1.世界の鉄道 一般社団法人海外鉄道技術協力協会 2015.10.2初版発行

*NPO21世紀水倶楽部