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シリーズ ヨモヤモバナシ



番外編:マンホールのヨモヤモ マンホールに登場する乗物は様々です

講話者:石井英俊*

コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)

1.はじめに

 前回は船を取り上げましたが,今回はそれ以外の「乗物」を探してみましょう。飛行機・ロケットなど空を翔けるものから,SL・電車など陸上を走るものまでいろいろと登場します。

2.まずは空からです

 各地の空港のある町の中で,飛行機をマンホールの絵柄にしているところがいくつかあります。その代表として佐賀県の川副(かわぞえ)町のふたを紹介しましょう(写真−1)。川副町は佐賀県南東部にある農村です。佐賀空港は有明海に面したところにあります。ということで,川副町のマンホールには空港を飛び立つ飛行機が描かれていました。真ん中にいる王冠をかぶったお魚さんはムツゴロウですね。広大な干拓地に実る稲穂も描かれていました。2007.10.1佐賀市に合併しました。他にも岩沼市(仙台空港),芝山町(成田空港),西春町(名古屋空港)などの蓋にも飛行機が登場します。

写真−1

 所沢市は埼玉県南部の狭山丘陵と武蔵野台地にある住宅・商工業都市ですが,最近では西武ライオンズの本拠地として知られています。所沢は1909年(明治42)旧陸軍飛行場が設置され,日本の飛行機発祥の地となっていて,市内には航空記念公園があります。写真−2のマンホールには市章の周りに複葉機が3機,市の木のイチョウの葉も描かれています。最近市章の代わりに市制60年を記念して制定された市のマスコット「トコロン」が描かれた蓋も登場しました。

写真−2

 仲南町は香川県南部,金毘羅さんで有名な琴平町の南にある農林業の町です。写真−3のマンホールにはタケノコとウメが描かれているのはわかりましたが,なんで模型飛行機が? 町役場に行ってみると「飛行原理発祥の地」と自慢げに書いてありました。明治22年に二宮忠八氏が,この町の樅の木峠でカラスが滑走するのを見て「飛行原理」を考えついたそうです。あのライト兄弟を先んじています。町ではタケノコなどを栽培,町の木と花がウメでした。2006.3.20満濃町他と合併し,まんのう町になっています。

写真−3

 埼玉県中央部にある桶川市は中山道の宿場町だったところです。かつてはベニバナの産地で,マンホールにもベニバナの描かれたものがありました。写真−4のマンホールには飛行船とケヤキ,ツツジが描かれています。市内荒川の河川敷には飛行船の発着場が設置されています。ときおり広告用の飛行船が東京上空を飛んでいますが,ここから飛び立ったのでしょう。市の木がケヤキ,市の花がツツジになっていました。

写真−4

 我孫子市は千葉県北部の手賀沼と利根川にはさまれたところにあります。写真−5は水道の空気弁のマンホールです。熱気球に乗って眺める景色には癒されるでしょうねえ。楽しい絵柄のふたです。埼玉県の吉川市水道,宮城県の大崎市水道のふたには野山を飛ぶ風船が描かれていました。

写真−5

 大佐(おおさ)町は岡山県の北西部,高梁川上流の小阪部川流域にある町で,2005.3.31新見市に合併しました。写真−6のマンホールに描かれていたのは花・木と鳥とここまでは珍しくないのですが,ハンググライダーも描かれていました。町の中心の刑部(おさかべ)駅西には大佐山があり,麓にはスカイスポーツのスクールもあります。大佐山から小阪部川を眼下に見て風の音を聞きながらの降下,気持ちよさそうですね。

写真−6

 田代町は秋田県北部,米代川中流北岸から青森県境までのびる林業の町です。マンホールにはグライダー,アユと竹の子が描かれています(写真−7)。町の北側にある十ノ瀬山にはハンググライダーのリリースエリアが設定されており,毎年9月に「かもしかカップ」が開催されます。町の南側には米代川が流れており,8月14日に全国アユ釣り大会,支流の早口川,岩瀬川で大鮎が釣りあげられるそうです。タケノコは「根曲がり竹」,採れたてを素焼きにして頂きたいですね。合併して現在は大館市になっています。

写真−7

 宮城県南部の角田市,マンホールに描かれているのは発射台に据えられたロケットです(写真−8)。角田市には宇宙航空研究開発機構の角田字宙センターがあります。また,HUロケットの実物大の模型があり,角田スペースタワーとして市民が宇宙と触れ合う場にもなっています。駅からはちょっと離れていますが,さすがに大きいのでこのロケットがよく見えます。マンホールのロケットの両側には市の花のリンドウも描かれています。

写真−8

 岩城町は秋田県西部の日本海岸にある町です。岩城町はあまり知られていないようですが,日本のロケット発祥の地で,昭和30年6月に道川海岸で日本初のロケットが打ち上げられました。写真−9のマンホールには中央に誇らしげにロケットが描かれています。花はツツジでしょう。2005.3.22本庄市他と合併,由利本庄市になっています。

写真−9

 国分寺市の市制60年(日本のロケット開発60年でもある)を記念して設置されました。現在のJAXAの前身である東京大学生産技術研究所があり,ここで「ペンシルロケット」の実験が行われたのです。現在は記念碑が残るだけですが,国分寺駅北口からの道の歩道に12種類のロケットを描いたマンホールが解説付きで置かれています。ちなみに写真−10の蓋に描かれているペンシルロケットは実物大だそうです。

写真−10

 つくば市は茨城県南西部にあり学術研究学園都市として昭和62年に市となりました。多くの研究機関が集まり,その中に筑波宇宙センターもあります。それにちなんででしょう,マンホールには土星とスペースシャトルが描かれています(写真−11)。背景にあるのは筑波山,これは外せませんね。つくばエクスプレスが開通し交通の便が良くなりました。これでエキスポセンターをはじめ,いろいろな研究機関の一般公開も手軽に楽しめそうです。

写真−11

 羽咋(はくい)市は石川県中部の邑知潟平野西端にある都市です。河北砂丘沿いに大型バスも走れる千里浜ドライブコースがあり,私も観光バスで楽しんできました。写真−12のマンホールに描かれているのは荒波とハマグリ?ここはハマグリが名産だったっけ?いえいえ,羽咋市は「UFOの街」だそうです。月に見えるのはUFOですね。市の鳥のハクチョウを押しのけてUFOが飛び交っています。

写真−12

3.陸上での花形はなんといっても SLです

 新潟市の南の「新しい湊」という意味の新津市,2005.3.21に新潟市に合併しました。写真−13のマンホールに描かれているのは油井とSL,市の花のサツキです。新津は信越線から羽越線と磐越西線が分岐する鉄道の要所です。かつてはSLが大活躍していました。そして新潟は日本の油田地帯でもありました。古くは「柄目木(がらめき)の土火」として,“越後の七不思議”と言われたそうです。明治前期に最盛期を迎えましたがその後衰えました。SLの煙には「花とみどりと石油の里」と書いてあります。

写真−13

 御殿場市は静岡県東部富士山東麓にある商業・保養都市です。御殿場市のマンホールにはSLが登場しています(写真−14)。富士山を背景に市の花のフジザクラが咲く峠を力強く登っているのは「D52型」です。SLフアンの間では「デゴイチ」が有名ですが,D52は急こう配を上るために開発され,東海道の大動脈を担う機関車として造られたそうです。丹那トンネルができるまでは,東海道本線は現在の御殿場線を通っていました。御殿場駅前でその雄姿を見ることができます。今はローカル線ですが,富士山を車窓に見ながらの旅もいいものです。

写真−14

 根室市内「花咲きロード」で見つけたマンホール蓋です(写真−15)。「根室本線全通」と書いてあります。大正10年8月5日の日付と蒸気機関車が描かれ,型式は5700型だそうです。同じ通りには「根室県庁」の描かれたふたもありました。明治初期には函館県・札幌県とともに根室県が設置されたそうです。根室の歴史を示す記念のマンホールです。

写真−15

 岩手県の宮守村でも蒸気機関車の描かれている蓋を見つけました(写真−16)。釜石線が宮守川を渡るところ,そこに架かる四(五?)連のアーチ橋は「めがね橋」と呼ばれています。ちょっとカーブしている美しい橋の姿は,宮守村というよりも釜石線の代表的なシンボルでしょう。ここを夜にSLが渡っていく風景はまさに「銀河鉄道の夜」の雰囲気でしょう。

写真−16

 上松町は長野県南西部,木曽福島からさらに下ったところにあります。古くから木曾川上流の木材集散地だったところで,木曽川支流の小川を遡ったところにある赤沢自然休養林には森林鉄道も走っています。上松町のマンホールに描かれていたのはその森林鉄道とヒノキです(写真−17)。花も描かれていますが,これは町の花オオヤマレンゲだそうです。モクレン科の花で白い甘い香りがする花だそうです。

写真−17

 北斗市は2006.2.1上磯町と大野町が合併して設置されました。新幹線が北海道まで延伸され設置されたのが「新函館北斗駅(旧渡島大野駅)」です。その駅前に新幹線マンホールが設置されたという話を聞き取りに行きました(写真−18)。ある写真展でこの写真を見た小学校入学前の坊やがつぶやいたのは「あっ,かがやきだ」。お父さんが「子供は正直ですねえ」と頭を掻いていました。「はやぶさ」になるんでしょうか?翌年カラーの蓋が設置されましたが,やはり「かがやき」でした。

写真−18

 埼玉県中央部,さいたま市の北にある伊奈町は東北線と高崎線の間にあり,かつては交通の便があまりよくありませんでした。新幹線が開通した際にできたのが新交通システムの「ニューシャトル」,上越新幹線の高架線の横をかわいい車両が走ります。さいたま市への交通の便が確保され人口も急増しています。伊奈町のマンホールには町の木のモクセイ,町の花のバラとともに,このニューシャトルが描かれています(写真−19)。

写真−19

 職場の友人から,「都電のマンホール」があるようですよと聞いて撮りに行きました。都電荒川線の梶原駅そば,商店街の通りに設置されたものです(写真−20)。都内で唯一残った都電ですが,地域の人たちの足として,またレトロな雰囲気を残した乗り物として親しまれています。いつも多くの乗客があり,都電自体は黒字だと開いています。この商店街にある和菓子屋さんが作る「都電最中」,中身もおいしいのですが,都電を形どったパッケージも気に入ってます。沿線の病院に入院していた息子のため買っていったところ,よく箱で遊んでいました。

写真−20

4.ちょっと変わったところでは

 奈良県中西部金剛山地東麓にある御所(ごせ)市のマンホールには,葛城山のロープウェイと市の花のツツジが描かれています(写真−21)。葛城山は大阪との県境にある960mほどの山ですが,登山口駅からロープウェイで6分,山上駅から少し歩くと登れるようです。尾根道には国民宿舎,自然ツツジ園もあり,きっとマンホールの絵のような景色を楽しむことができるんでしょうね。カラーの蓋は市役所に展示されていました。

写真−21

 新潟県中部の弥彦村,中心は彌彦神社です。マンホールには神社は描かれていませんが神社の背景になっている弥彦山とロープウェイ,神社裏の競輪場で行われる弥彦競輪が描かれていました。2種類の乗物が描かれています(写真−22)。マンホールに「競輪」というのも珍しいですね。弥彦山は新潟平野にぽつんとそびえる山,ロープウェイを上った山頂からは広い新潟平野の田園地帯が見渡せます。海側には佐渡が見えるとのことでしたが,私の行ったときには春の霞で見えませんでした。

写真−22

 滋賀県の南部にある県庁所在地の大津市です。1898年(明31).10.1市制をしきましたが,写真−23のマンホールは大津市制100年記念のふたです。大津駅前で発見しました。琵琶湖大橋,観光船など,賑やかに琵琶湖の風景が描かれています。ヤマザクラ・ユリカモメ・エイザンスミレ(市の木・鳥・花)も描かれていますが,左上に観覧車が描かれています。この観覧車はベトナムに移設されて今はないそうです。その後設置された110周年記念のふたには観覧車が無いバージョンになっていました。

写真−23

 島田市は静岡県中部の大井川下流域にある商工業都市です。「蓮台越え」は,以前「城シリーズ」でご紹介した小田原市の酒匂川と並んで大井川も有名です。島田市のマンホールにも蓮台越えの様子が描かれています(写真−24)。着物姿の女性が蓮台の上で何となく不安そうな表情に見えます。人足が「イタズラ心」を起こして揺らしたりしたら怖いでしょうねえ。この絵柄では女性は一人ですが,二人の女性を乗せている絵柄のものもありました。二人を乗せて担ぐのも大変でしょうね。そちらには富士山も描かれています。

写真−24

 同じ東海道筋では箱根関所前でも昔の乗物を見つけました。「駕籠」が描かれていますが,これは道路の排水路のふたです(写真−25)。一緒に駅鈴や捕り物ちょうちんを描いたものも置かれていました。私も箱根旧街道を歩いてみました(登るのはしんどそうなのでどちらも下り,箱根を起点に小田原・三島へ向かいました)が,あの『天下の険』をこの駕籠で行き来するのは駕籠かきも大変ですが,乗っている方も楽じゃないですよね。

写真−25

5.おわりに

 飛行機から始まり,ロケット・列車・ゴンドラ,はては自転車や駕寵まで様々な乗物が登場しました。このほかにも群馬県の子持村のふたには小さく「乳母車」も描かれていました。まだまだいろいろあるかもしれません。私の撮ったマンホールふたはまだ半分程度しかありませんから。次回は「虫」を集めてみましょう。

※日本のマンホール文化研究会