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世界の列車トイレ−アメリカ,コースト・スターライト号-

講話者 清水 洽*

コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)

 アメリカ大陸には3回ほど行きましたが,移動は全て飛行機とバスで列車に乗車する機会はありませんでした。今回,京都大学鉄道研究会OBの路次安憲様から写真と情報をいただいたので,アメリカの鉄道状況とともにまとめてみました。アメリカは皆様が御存じのように東部がイギリス領,中央部がフランス領, 南西部がスペイン領として植民地化されてきましたが,18世紀の独立戦争により膨大な国となりました。
 アメリカでの鉄道開業は大西洋側のサウスカロライナからで,1830年のことです。西へ西へと進められ1860年にはミシシッピ川の東部まで4万800kmに達する鉄道網が建設されました。軌道も1,435mの標準軌道に統一され,寝台車や食堂車が初めて運用されました。1916年には42万kmにも及ぶ鉄道網を有する世界一の鉄道王国となりましたが,第二次大戦以降,ハイウェイの整備と航空機輸送の発展により,鉄道は大都市近郊以外貨物輸送が主になっています。政府と各鉄道会社は幹線の旅客輸送網を残すため出資をして鉄道公社アムトラック(Amtrak)を1971年に設立しました。
 アムトラック自社が運行している路線はボストン〜ニュヨーク〜ワシントンのアセラ・エクスプレスのみで,あとは民間貨物鉄道会社の路線を借りて列車を運行しています。現在の運営組織はアメリカ鉄道旅客輸送公社と7社の1級貨物鉄道(CSX運輸会社,ノーフォーク・サザン鉄道,グランド・トランク鉄道,バーリントン・ノーザン,サンタ・フェ鉄道,ユニオン・パシフィック鉄道,カンザス・シティ・サザン鉄道,スーライン鉄道)と貨物鉄道全567社(2011年度)です。

写真1 ロスアンゼルスの観光地ハリウッドの丘 2013.4.2


写真2 その昔訪ねたロスアンゼルスの市役所の前で1976.7.5

 貨物列車に関しては,トラック輸送よりもシェアが高く2007年の統計でトン・マイルによるシェアは39.5%と1位を確保しています。この貨物鉄道の最も大きいのがユニオン・パシフィック鉄道で8,000両以上の電気式ディーゼル機関車を所有し,車扱列車の運行(日本では車扱列車はなくなっています)で大規模な操車場を10ヵ所ほど持っています。
 一方,旅客輸送はアムトラックが行っていますが,現在は大型の投資の計画はなく,貨物事業者が自らの判断で整備と運営を行っていますが,新たな鉄道建設の計画はありません。カリフォルニア州の高速鉄道計画はサンフランシスコ〜ロサンゼルス〜サンディエゴを結ぶ総延長1,120kmの高速鉄道計画で,最高速度350km/h給工事費250億US$と試算されていますがまだ具体化しておりません。

コースト・スターライト号

 アメリカ西海岸をシアトルからロスアンゼルスを約34時間で走破する寝台車,ダイニングカー,サイトラウンジカーなどを連結した10両編成の豪華な観光列車で毎日運転されているようです。

図1コースト・スターライト号のダイニングカー,サイトラウンジカーとコーチカーの1階と2階の平面図,トイレは1階部分に集中されています。 京都大学鉄道研究会OB 路次安憲氏提供


写真3 ユニオン駅10番ホームで発車を待つコースト・スターライト号 2013.5.26
京都大学鉄道研究会OB 路次安憲氏提供




写真4 コースト・スターライト号の男子用トイレとその真空式トイレ 2013.5.26
京都大学鉄道研究会OB 路次安憲氏提供


写真5 コースト・スターライト号の車椅子対応の真空式トイレ 2013.5.26
京都大学鉄道研究会OB 路次安憲氏提供

パシフィック・サーフライナー号.

 カリフォルニア南部をカバーする短距離列車で,サンディエゴ〜ロスアンゼルス間が11本と最も多く,ゴレタ〜ロスアンゼルス間が2往復の優等列車です。列車編成はディーゼル機関車を先頭に2階建ての客車でビジネスクラス車1両とコーチ車3〜5両と軽食ができるラウンジカー1両を連結する5〜7両編成の列車で,運転はプッシュプル方式で返しは機関車を付け替えることはせず,客車が先頭で運転されます。

写真6 サンタバーバラ駅近くのロスアンゼルスよりの直線区間を行くパシフィックサーフライナー号 2013.5.26
京都大学鉄道研究会OB 路次安憲氏提供




写真7 パシフィック・サーフライナー号の真空式トイレ 2013.5.26
京都大学鉄道研究会OB 路次安憲氏提供

引用文献
1)「長新世界の鉄道」社団法人 海外鉄道技術協会編集 再版発行2006.7
2)松尾よしたか「ユニオン・パシフィック鉄道が誇る 世界最大の貨物操作場」鉄道ファン2013.12 Vo1.53.No632

※NPO21世紀水倶楽部