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世界の列車トイレ ースイスその2ー

△講話者 清水 洽 *

コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)

 スイスは九州ほどの国土に5,000kmを超える鉄道網が整備されています。アルプスの山や谷の国では,道路整備による車輸送より鉄道のほうが便利なようで,トラックも貨車に載せ鉄道での移動が実施されています。そのためか鉄道建設は民間の力で整備されましたが,1902年に幹線を中心に国有化され,5,000kmのうち約6割が連邦鉄道(SBB)により経営されています。イタリアからアルプス横断のシンプロントンネルの幹線を所有するBLSや中小の路線を持つ民間鉄道が65社ほど有ります。軌道幅も600,800,1,000,1,435mm, 電圧も直流600Vから交流15kVと多様です。一部蒸気機関車運転区間以外は全線電化されていますが,民鉄の大部分は赤字経営で連邦からの補助金を得て経営しています。
 スイス連邦鉄道(SBB)の路線はEUの政策に倣って解放され,全列車キロの約3%がSBB以外の鉄道事業の列車です。ジェノバ,ローザンヌ,ベルン,チューリヒの各都市にはフランスの高速鉄道TGVが,ベルン,チューリヒにはドイツの高速鉄道ICEが,またイタリア製振り子電車ETR470がミラノより,スイスおよび南ドイツの諸都市を結ぶ高速鉄道で運行されています。いずれもスイス国内は速度を落とし,座席は空いているところは自由席で各国の高速車両に乗車できます。
 各国が乗り入れている高速鉄道の列車トイレは真空式化トイレで汚物は貯留式ですが,インターシティー(IC)やSBBの列車には汚物垂れ流しの車両が多く残っています。
 今回は2007年のスイス編に引き続き,NPO21世紀水倶楽部理事長の亀田泰武氏からのスイス観光列車の情報と写真で報告いたします。

・ゴールデンパス・ライン

 氷河急行についで入気なのが最近できたゴールデンパス・ラインです。レマン湖畔のモントルー駅からシュピーツ駅,インクーラーケン・オスト駅,マイリンゲン駅経由のルツェルン駅まで全長254kmの3社の鉄道塒線をまたぐ観光列車です。列車はゴールデンパネの名のとおりゴールド色ベースに統一されていますが,直通運転はできません。この路線はMOB(モントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道軌道1,000mm)でモントルー〜ツヴァイメン間,SEZ(ジンメンタール鉄道1,435mm軌道)でツヴァイジンメン〜シュピーツ間,スイスきっての大手私鉄BLS(レッチベルク鉄道1435mm軌道)でシュピーツーインターラーケン・オスト間,とSBBブリューニック線(国鉄ながら1,000mm軌道)でインタラーケン・オスト〜ルツェルン間の3社の私鉄と国鉄線との乗り継ぎのため,最低でも3回は乗り換える必要があります。運行は一日に3往復で約7時間の乗車になります。

・氷河急行

 スイスで有名なのがこの氷河急行です。マッターホルンの麓ツェルマット駅からベルニナ急行が運行されているサンモリッツ駅までの269kmを約8時間,平均時速34kmで結ぶ急行です。MGB(マッターホルン・ゴッタルド鉄道)とRhB(レーテイツシュ鉄道)の2社で運行されています。同じ軌道幅の路線を通っていますが,急勾配をラックレルで登るので電気機関車による牽引です。機関車はディセンティス・ミュンスター駅で交換します。2006年に全車パノラマ編成の1等,2等の車両になりました。食堂車は廃止されましたが,厨房から食事を運んでくれます。座席は自由席と指定席がありますが日本から指定席を手配しておくのが安心です。8時間の乗車ですから当然トイレ設備は備えています。
 真空式の清潔なトイレです。

写真1 スイス連邦国鉄(SBB)ブリエンツ駅に停車中のゴールデンパス・ラインを牽引するZB電気機関車。国鉄ながら軌道幅は1,000mmです。 亀田泰武氏提供  2009.8.12

写真2 ブリエンツ駅停車中のゴールデンパス・ライン。SBBの車両です。亀田泰武氏提供 2009.8.12

写真3 ゴールデンパス・ラインの終着駅ルツェルン駅舎 1976.5.29

写真4 ツェルマット駅で発車を待つ氷河急行 亀田泰武氏提供 2009.8.13

写真5 亀田氏が乗車された氷河急行最後尾の1等車 亀田泰武氏提供 2009.8.13

写真6 1等車輌の真空式トイレと洗面器 亀田泰武氏提供  2009.8.13

写真7 氷河鉄道のマッターホルン入口MGB(マッターホルン・ゴッタルド鉄道)とフルカ・オーバーアル鉄道との連絡駅フィスプで出発を待つMGB登山列車奥の左に見えるのが登山電車 2004.8.19

写真8 レーテイツシュ鉄道のクール駅,氷河鉄道はここより向きを変えてサンモリッツ駅に向かいます 亀田泰武氏提供  2009.8.13

写真9 おまけの写真です。チューリヒ,ベエルトヘルツリ下水処理所玄関での若かりし頃の私1976.5.26

写真10 チューリヒ下水処理場で調査したファーラ方式の下水汚泥高温熱処理法のフローシート 1976.5.26

参考文献
1)「スイス鉄道の旅」2006.3.24.改訂第2版 潟_イヤモンド社
2)最新「世界の鉄道」2006.7.再版発行 社団法人 海外鉄道技術協会

※NPO21水倶楽部
 日本下水文化研究会会員