読み物シリーズ
シリーズ ヨモヤモバナシ
世界の列車トイレの現状B
△講話者 清水 洽 *
コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)
5.エジプト
昨年,エジプトツアーに出かけ,カイロからアレキサンドリアへ列車で往復する機会がありました。当然.覗くのは列車の中のトイレです。乗った車両が1等車のためトイレなる入り口付近には警備員がずっと見張っています。カメラを持ちトイレの前をうろうろしていると尋問されそうです。列車が発車してしばらくすると警備員は,手抜きでどこかへ行ってしまいました。早速ドアを開けて写真を撮りました。
エジプトの鉄道は,国の経営でほとんど電化されていません。フランス製やスペイン製の車両をドイツかフランスのディーゼル機関車が引っ張っています。カイロを中心にナイル川沿いに複線の立派な軌道が設置されています。やはり軍事用の貨物列車が優先か?
我々が乗る,カイロ発アレキサンドリア行き急行列車。
まだディーゼル機関車は付いておりません。
ホームの陰に隠れて,汚物流し管は見にくいです。
エジプトの観光地でのトイレは有料です。入り口でお金を払うと,手拭かトイレットペーパーをくれます。ホテルのトイレにはトイレットペーパーが付いていますが,町の中のトイレにはそんなものはありません。備え付きの空き缶に水を入れ,左手でこの水を使いお尻を洗い,その後缶の水で汚物を洗い流します。当然,列車トイレにもペーパーは置いてありませんでした。
カイロ駅の回送列車の汚物流し管
我々が乗った1等車。車両の両端にトイレが付いていました。
ちゃんとチケットを買って乗りましたが,全く読む事は出来ません。
日本と同じようにしゃがむ事も出来るトイレです。トイレの前に2つも踏みボタンがあります。便器にパイプが出ているので覗きこんで,前の踏みボタンを踏んだら,パイプから水が飛び出し,顔にかかってしまいました。なんとお尻洗浄器つきトイレです。
アレキサンドリアの駅名です。
アレキサンドリアからカイロ行きの列車のトイレは普通の洋式トイレです。
その上お尻洗浄パイプが付いています。
出発を待つカイロ行き急行列車
6.中国
NHKテレビ番組「関口知宏の中国鉄道大紀行」で有名になりました中国の国有鉄道ですが,トイレの報告は一度もなかったと思います。それほど報告するに値しなかったのでしょうか?
国土面積959.6万km3,人口13.2億人,鉄道路線の長さは7.6万kmしかも未だ年1,000kmペースで新線の建設が進められています。2007年4月のダイヤ改正では北京,ハルビン,大連,上海,南京,杭州などの主要都市に200km/hrで走る列車は動力分散方式の電車が採用され,形式CRH−1がカナダ,CRH−2が日本,CRH−3がドイツ,CRH−5がフランス製と4種類の新型電車が走っています。これは将来,北京−上海を走らせる新幹線車両を自国で開発するための試験車両でしょう。これらの車両には真空式の水洗トイレが常備され,汚物はタンクに貯留し車両基地で処理していると思います。
二等車両(普通車)
日本の新幹線と同じ2席×3席,洋服フックも同じ位置
一等車両(グリーン)
日本と同じ足置きまである。最高速度334km/h
一等車両はミネラルウオーターのサービスもあった。天津→北京南駅まで30分。
二等58元,一等69元。特等連結の車両もありこれは98元とのこと。
中国新幹線天真−北京南。
日本製の車両は九州新幹線とほぼ同じ仕様です。
(08.10.17 ダイネン椛′エ寛二さん提供)
さて中国のメインルートは電化されていますがほとんどの路線は未電化でディーゼル機関車による列車運転です。私の乗車した2002年の上海−杭州は未電化でディーゼル機関車が2階建での車両を引っ張っておりました。トイレは一車両両端の2箇所に付いており,トイレからレールを見ることが出来ました。当時はチケットを手に入れるのが大変でした。
上海南駅での杭州行き快速列車。
2階建ての座席は全て指定席で満員でした。02.1.10
上海南−杭州の行き先表示板。02.1.10
杭州六和塔より銭塘江大橋を行く急行列車。良く見ると汚物流し管が見えます。
杭州駅での回送列車。
見難いですが最後尾の車両の後ろ側に汚物流し管が見えます。
02.1.11
大連では朝食前にと,旧日本軍が建設した中山広場や満鉄の建物などを撮ったフイルムを,鉄道を跨ぐ勝利橋上でカメラから取り出した拍子にレールに落としてしまいました。落としたフイルムは無事見えていますが,橋を下りてフェンスを乗り越え,フイルムを回収する勇気はございません。お陰で観光写真はありません。前日撮った仕事の写真は無事でした。
京都大学鉄道研究会OBの新谷恭将さんの情報ですと,標高3,600mを行くチベット線の車両はカナダ製で新幹線と同じく気密を保つため真空式トイレ設備とのことです。
引用文献:
佐藤芳彦「世界の高速鉄道」鉄道ファン2008年7月 VoL48.N0.567
地球の歩き方 大連・瀋陽・ハルビン 潟_イヤモンド・ビッグ社 2007.08.31
杭州駅で回送列車と我々の乗車する上海南行き快速 02.1.11
2008年2月に訪ねた大連駅では,北京や上海からの寝台列車が到着していましたが写真で見る限りトイレの下には流し管が付いており,汚物は路線に垂れ流していると思います。
1937年太田宗太郎設計の大連駅舎。
外観は上野駅,小樽駅に似ています。08.1.25
勝利橋〈元日本橋〉の上から見た,上海や北京から
大連駅に到着した長距離寝台列車。08.1.25
長距離列車の汚物流し管です。
左の車両が寝台車,右の車両が座席車両です。08.1.25
中国新幹線の情報が入りましたので前回に引き続き報告いたします。中国の新幹線は在来線と同じ軌道になるため,高速新幹線から在来線に乗り入れる運行になっているようです。一方,車両は在来線を200km/hrで走る仕様の8連×8編成で運行されております。その車両はカナダ・ボンバルディア製2編成,日本のE2系2編成,ドイツ・シーメンス製2編成,フランス・アルストーム製2編成の4種類です。これら4カ国の車両の良いところを取って中国独自の車両を作るのでしょう。高速新幹線は北京からハルピン,大連,上海,南京,杭州で進められており,上記の200km/hr仕様の車両が新幹線区間を250km/hrで運行されています。
まずは,ダイネン鰍フ早原寛二様から送られた新幹線和諧号の写真です。
南北京−天津−塘沽間の和諧号一等車両内とビュッフェ
和諧号の水洗トイレと手洗い。日本製の車両の様です。
次はNPO21世紀水倶楽部佐藤和明様から送られた,北京−ハルピン間の新幹線和諧号の乗車時写真です。
和諧号2編成連結16両編成の列車(上)、和諧号の便器です(下)。
北京−ハルピン間の列車トイレ室内の手洗い(上)と水洗押しボタン(下)
便器がインドの車両の便器(NPO21世紀水倶楽部,望月倫也様の情報)と同じようなのでフランス製の車両かな?
参考文献
1)佐藤芳彦「世界の高速鉄道−中国・インド・ベトナム−」鉄道ファン2008.7月号Vol.48.No.567
※日本下水文化研究会会員,NPO21世紀水倶楽部副理事長