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世界の列車トイレの現状

△講話者 清水 洽 *

コーディネーター 地田 修一(日本下水文化研究会会員)

1.イタリア

1)はじめに
 ここでは,世界の列車のトイレの現状を紹介したいと思います。あくまでも私が訪問し乗車した鉄道の写真を中心に,その国の列車トイレの実情を報告いたします。まずは私の娘が住んでおりますイタリアからです。
 ヨーロッパの鉄道列車トイレは,基本的には垂れ流しのようです。
 イタリアの鉄道網は日本と同様,良く整備されており,主要幹線は電化されています。しかし,地上施設は判りませんが,車両設備の維持管理はあまりよくありません。開閉できない窓,鍵のかからないトイレ,落書きだらけの車両が結構あります。
 列車トイレも全車指定のユーロスターES(Euro Star Italia)は,少量の水を使った真空式のトイレで,汚物はタンクに貯留されていると思われます。
 同じく全車指定のIC(Inter City)特急や,一般自由席の急行,普通列車は,水洗ですが全て垂れ流しでした。トイレは各車両の両端に1箇所ずつ整備されていますが,最近キセル乗車や違法在住者などがトイレに隠れて移動する事からトイレの数を減らすそうです。
 一方,アオスター渓谷やシシリア等のローカル線は電化されておらず,気動車が1両か2両で走っていました。トイレはもちろん洋式ですが,汚く,私の学生時代の国鉄車両のようにトイレの流し管からレールや枕木を見ることが出来ました。

2)ユーロスター(ES)

ベネチア サンタルチア駅で,出発を待つローマ行き(左)とミラノ行き(右)
ES特急 07.4.27
ES特急の真空式トイレ ベネチア サンタルチア駅にて07.4.27
ES特急のトイレのした(覗き見るもタンクが見えず。駅員にしかられる)07.4.27
ES特急ボローニア駅にてミラノ行き 07.4.29

 3)インターシティー(IC)

IC特急車両。ミラノ中央駅にて 07.4.26
IC特急の列車トイレ。垂れ流しです 07.4..26
IC特急の垂れ流し管 ミラノ中央駅にて 07.4.24
lC特急の車両の流し管 07.4.24
ベネチア サンタルチア駅に到着するIC特急 07.4.27

4)一般列車

ベネチア サンタルチア駅に到着する普通列車。
もちろんトイレは垂れ流しです。 07.4.27

5)ローカル線

アオスタ渓谷を走るクールマンユール行き気動車。
美しい景色のリゾート地を走っているのにトイレは垂れ流しです。 04.8.26
シシリア エリチェ駅に到着する最新型の気動車。
こんなに民家の近いところを走るのにトイレは垂れ流しです。05.8.23
シシリアリゾート地タオルミナ駅を出発したカターニア行きの最新型普通電車  05.8.28
シシリア カルタジローネから乗車した気動車。
乗車中トイレに行くもあまりの汚さに写真は撮れず。
トイレからはレールが見えました。カターニア駅にて 05.8.27

6)私 鉄

 
私鉄ノルド線ミラノからコモ湖行き快速列車。
電気機関車に引かれる列車ですがトイレは完備されております。
しかし中は汚く写真を擔る気がしませんでした。 もちろん汚物は垂れ流しです。 07.4.30
私鉄ノルド線コモ湖ノルドラゴ駅の電車。
大都市ミラノのリゾート地に行く電車ですが,トイレは汚く垂れ流しです。 07.4.30

2.スペイン

 昨年の暮れ,スペインの高速鉄道AVE(Alta Velopidad Espanola)にコルトバからマドリードまで乗車する事が出来ました。もちろん訪ねるのはトイレです。
 スペインの国鉄RENFE(Red Nacional de los Ferrocarriles Espan oles)は広軌〈1668mm〉を採用していますが,AVEは日本の新幹線と同様標準軌〈1435mm〉で建設されました。将来EU諸国の都市間を高速鉄道でつなぐためでしょう。
 スペインの国鉄はマドリードを中心とした鉄道路線網が整備されており400km以上の長距離を走る特急,急行,夜行寝台などの長距離線(Larga Distancia),また都市と地方を結ぶ中距離線(Regionales),さらにマドリードやバルセロナなどの大都市と地方を結ぶ通勤用の近郊線(Cercanias),及び貨物・ロジスティクスなどの事業部門に分かれています。
 写真−1のAVEは日本の新幹線と同様専用軌道を走り,運転時問は正確で5分以上遅れると料金を払い戻すそうです。マドリード・アートチヤ駅やコルトバ駅〈写真−2〉は在来線のホームと同じ地上駅で乗換えが便利です。

写真1 セルビア駅のAVE〈新幹線〉ホーム 亀田泰武氏
写真2 在来線と新幹線と同じ平面ホームのコルトバ駅 08.12.17
写真3 マドリード・アートチヤ駅に到着したS103ドイツシーメンス製 08.12.17

 写真−3は私の乗車したS103はドイツシーメンス製で,トイレは車両の両端2箇所にありました。運転距離がまだ短かったのか,非常に清潔でした。トイレ室内にはトイレットペイパーはもちろん洗面所と手の乾燥機が付いていました。真空式のトイレで,汚物はタンクに蓄えられているようです。

S103のトイレのドア 08.12.17
同じく洗面所 08.12.17
同じく洋式便器 08.12.17
同じく手のドライヤー 08.12.17
写真4 セルビア駅でのAVESlOOフランスアルストム製でTGVと同じ仕様です。
セルビア駅での近郊電車です。トイレは付いていません亀田泰武氏提供
写真5 セルビア駅での長距離線の列車〈左〉と近郊線の電車〈右〉亀田泰武氏提供

 写真−4は亀田泰武さんの撮影されたアルストム社製S100で,先頭車と最後部を電気機関車としたTGVと同じ仕様です。
 写真−5はセビリア駅での長距離線の列車〈左〉と近郊線の電車〈右〉です。確認していませんが,トイレは垂れ流しでしょう。

参考文献
1)佐藤芳彦「世界の高速鉄道」−スペイン タルゴ・アルストム・ICEファミリー鉄道ファン 2008.2月号Voi.48.No.562
2)地球の歩き方−スペイン 2008-2009年版 潟_イアモンド。ビッグ社

※日本下水文化研究会会員