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シルクロード水紀行

木村 淳弘

はじめに

 私は1995年夏、中国新彊ウイルグ自治区の首都ウルムチからカシュガルまで車で旅行しました。また、昨年の夏には、カシュガルから中国とパキスタンの国境であるタンジュラブ峠を越え、イスラマバードまでバスで旅行しました。
 この紀行はその間、見た水に関する事項を紹介するものです。
 カシュガルからイスラマバードまでの道はカラコルムハイウェイと呼ばれ、パミール高原を横断し、中国、インド、パキスタン間で領土紛争を行っているカシミール地方を横断する山岳道路です。アフガニスタンとも接していて、特に昨年9月の同時テロ事件からは、治安が悪化しており、現在では観光客は近寄れない状況にあるものと思われます。私はその寸前に貴重な経験をさせていただきました。
 このウルムチからイスラマバードまでのルートはシルクロードのルートに当たり、多くの遺跡があり興味深いものがあります。しかしこの区域は基本的には乾燥地帯であり、水紀行として話をするには適当ではないかもしれません。しかし、見てきた水に関することを述べてみたいと思います。
 はじめのウルムチからカシュガルのルートは、タクラマカン砂漠の中の道であり、オアシスを結ぶように道が延びています。その距離は約1600キロにおよびます。
 この区域のシルクロードは3本あったとされています。天山山脈の北を通る天山北路、南側を通る天山南路、タクラマカン砂漠の南側を通る西域南路であります。私が通ったのは天山南路にあたります。


世界で2番目に低い湖

 先ず自治区の首都ウルムチからトルファンにでます。トルファンは世界でも有数な雨の少ない地域として有名です。
 この近くにアイディン湖があります。この湖は世界で2番目に標高の低い場所とされています。−154mだそうです。夏は非常に暑く、気温は50℃を上回り、地表温度は70℃を超えるそうです。このため夏は、水は蒸発してなくなり、塩を含んだ泥土地帯となります。緯度は北海道位ですが、内陸で標高が低いこともあって、夏は気温が高くなるようです。アメリカのデスバレー(標高約−86m)でも夏は40℃を超えます。私がアイディン湖を訪れた時も非常に蒸し暑く、すっかり体調を壊してしまいま した。


潅漑地下水道カレーズ

 この地域からイラン地方にかけて、カレーズと言われる、用水施設が整備されています。これは、山岳地帯の地下水を数十キロの渡り、地下水道を掘りオアシスまで水を引く施設であります。オアシスに達すると地表面に現れ、オアシス一帯を灌漑し、砂漠の中に消えていきます。
 トルファンで施設を見せてもらいました。直径1.3から1.4mぐらいの素堀の水路が地下に延々と続いています。そして、約30m間隔で崩れた土砂を取り出す素堀のマンホールが設けられています。これらのマンホールは長年に渡り、土砂を搬出してきたため、蟻塚の様に盛り上がっています。
 カレーズはいつ頃から造られたかは分かりませんが、シルクロードのオアシスはこの様な灌漑施設で生活を維持しており、数千年に渡り維持されてきたものと考えられます。シルクロードのオアシスの大部分は、我々が考えているような、湧き水のオアシスではなく、長年、渇水と戦いながら、灌漑施設を造り、維持してきたものであります。
 砂漠の中に延々と一直線に並んでいるカレーズの蟻塚の様なマンホールを見ると、人間の力の偉大さを感じさせられます。しかし、現在では、水道に代わりつつあり、次第に使われなく成っているようです。


天然のオアシス

トルファンからカシュガルの途中に、キジルと言うオアシスがあります。ここにはキジル千仏洞と呼ばれる、4世紀から5世紀にかけて造られた石窟洞が多数あります。ここには泉があり、今でも水が湧き出ています。
 非常に不思議な光景であります。周辺は砂漠地帯で、水は一切なく、乾燥した岩と砂ばかりの地形であります。湧き出している岩も周辺は完全に乾燥しています。
 なぜ、水が湧き出るのか不思議に思われます。しかし、千仏洞が造られてより、延々と千年を超える間、枯れることなく水が湧きだしていたのです。


砂漠の雨

 砂浜で雨に遭いました。突如として雷がして雨が降りました。非常に珍しいことです。相当強い雨でしたがすぐやみました。
 しかし、砂漠の雨は災害を起こします。突如として、低いところが川となり、道路も川となります。草、木が生えていないので、土石流が発生します。その土石流が道路、橋を流してしまいます。
 平らな地形の所には湖が突然として現れます。そして、次第に水は砂漠の中に消えていきます。信じられない光景です。


カシミール地方

 国境のタンジュラブ峠は標高4730mの峠であり、高山病に対する注意が必要です。私が訪れたときは、同時多発テロ以前であったため、のどかな国境でありました。中国パキスタン両国の兵隊が雑談していました。
 国堤からパキスタン側のカシミール地方は標高7000mから8000mの山々が連なる山岳地帯です。標高世界第2の山、K2もこの中にあります。しかし基本的には乾燥地帯です。6000m級以下の山には雪がなく険しい岩山となっており、草木も生えていません。まさに活動期の山岳地借の様相を呈しています。


中国とパキスタンのトイレ事情

 中国を旅行した人が経験するのは、地方のトイレの汚さと、臭さです。特に公衆トイレはくみ取り式で、四角な穴が開いているだけのトイレが一般的です。金隠しがないためどちらを向いて用を足したら良いのか分からなくて困ることがあります。中国人は入口の方に向かってしゃがむようであります。
 パキスタンに入るとトイレは水洗便所が普及しています。地方のレストラン、公共トイレでも水洗になっています。便器は日本式トイレの金隠しがないタイプで、足置きのステップが付いており、JRの駅のトイレの様な形式です。やはりどちらを向いてしゃがむのか分かりません。パキスタン人の用を足しているのを見たことがないので分からないのです。
 パキスタンに水洗便所が普及しているのは、イギリスの植民地であったからだと思います。


日本の下水道

 フンザのアルチット村で看板を見つけました。それには「日本の好意により、日本大使館の協力の下に下水道を整備する。」と書かれてありました。現在管工事がほぼ終わり、処理施設の建設をしているとのことでありました。残念ながら時間の関係で見ることができませんで した。
 日本の援助はこの様なパキスタンの田舎まで及んでいるのに関心しました。村は小さな旧集落で、衛生上の問題で工事に着手したようであります。完成は2001年12月となっていましたが、テロ騒ぎで完成したか心配であります。


洪水の災害

 登山基地で有名なフンザの町の近くで洪水の跡に出会いました。約1週間前に雨が降り、氷河から鉄砲水が発生し、土石流となって、村を埋め尽くしたようであります。住民が呆然として立っていました。救助の手はまださしのべられていないようでありました。厳しい自然の一面を見せつけられました。


黒い氷河

 フンザの近くのホパール氷河を見に行きました。泥を被り、岩を巻き込み、荒々しい大きな黒い氷河でありました。この地方の氷河は今なお、岩を削り、活動している氷河に思われました。我々が他の地域で見る、白い穏やかな氷河とは異なって、荒々しい氷河でした。


地球温暖化の証人

 フンザからイスラマバードに行く途中の町キルギットの近くで磨崖仏を見ました。約60m上の岩壁に彫られていました。現在では近づくことはできません。7世紀から8世紀に彫られたようであります。当時はこの一帯は氷河に覆われており、当時は足場の必要もなく、彫れたとのことであります。約千数百年の間に厚さ60mもある氷河が消滅したことを表しています。この仏様は地球温暖化の証人であります。


濁流のインダス川

 キルギットからイスラマバードへの道はインダス川沿いに下っていきます。インド文明の発祥の川、インダス川はカラコルム山脈を水源とし、岩山を削っていく、荒々しい濁流の川でありました。


おわりに

 以上 旅行中の水に関することを述べてみました。
 この地域は世界でも有数の厳しい自然環境であると思います。しかしこの地域の住民は数千年に渡りこの厳しい自然の中で力強く生きてきたことに感動を覚えます。この地域にとって水は非常に貴重なものであります。しかし、一方乾燥地帯であるこの地域においても、水は災害を起こし脅威となることに、驚きを感じざるをえませんでした。